診療支援
治療

3 代謝性アルカローシス
metabolic alkalosis
伊藤 雄伍
(聖路加国際病院・腎臓内科)
長浜 正彦
(聖路加国際病院・腎臓内科医長)

学びのポイント

●酸の喪失やHCO3-の増加によって引き起こされ,細胞外液量の減少を伴っているかどうか,尿中Cl濃度,レニン・アルドステロン値によって鑑別を進める.

●治療の基本は原疾患に対する治療だが,細胞外液量低下を伴う場合には輸液による是正,低カリウム血症がある場合にはカリウムの補充を行う.

▼定義

 血液中のHCO3-濃度が上昇することによりpHが上昇した状態.代償性の低換気によりPCO2が上昇する.

▼病態

 消化管,腎臓からの酸(H)の喪失,アルカリ(HCO3-)の増加によってpHが上昇する.腎臓は過剰なHCO3-を尿中に排泄し,代謝性アルカローシスを補正しようとするため,代謝性アルカローシスが持続することはなんらかの障害により腎臓からのHCO3-排泄が低下していることを意味する.有効循環血漿量低下,アルドステロン症,低カリウム血症,腎機能障害などが代謝性アルカローシスを維持する機構に関与している.代謝性アルカローシスに対する細胞内緩衝作用によりKはHと交換で細胞内に移動するため低カリウム血症が起こる.

▼分類

 代謝性アルカローシスの鑑別はまず有効循環血漿量の低下がないかを確認する.低下している場合には尿中Cl濃度を測定し消化管からの喪失か,腎臓からの喪失かを鑑別する.低下がない場合には高血圧の有無によってアルドステロンの作用亢進の病態とそれ以外を鑑別する(図9-19)

▼病態各論(表9-8)

嘔吐

 胃内容物を嘔吐すると,胃粘膜から分泌されたHClが失われる.その結果,酸(H)の喪失と代謝性アルカローシスが起こる.細胞外液量の減少によりレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)が活性化され,尿細管でのHCO3-再吸収,H分泌が亢進することにより代謝性アルカローシスからの回復が遅延する.アルカローシスによる細胞内へのカリウムのシフト,アルドステロン作用

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