診療支援
治療

1 慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常
chronic kidney disease-mineral and bone disorder
風間 順一郎
(福島県立医科大学主任教授・腎臓高血圧内科)

▼定義

‍ chronic kidney disease-mineral and bone disorder=CKD-MBDは「骨や心血管障害を呈するに至りうる慢性腎臓病に伴う全身性のミネラル代謝障害」と定義される.これは腎臓の機能を失ったことによって生じた全身性ミネラル代謝障害に由来して起こる病態の総称であり,逆に透析患者の骨病変がすべてCKD-MBDというわけでもない.

▼病態

 生理状態におけるカルシウム・リンの代謝は,吸収する小腸,排泄する腎臓,貯蔵する骨,そして司令塔である副甲状腺などが密にフィードバックしあうネットワークによって営まれている.腎臓が障害されるとこれらの排泄という機能が果たせなくなるだけでなく,フィードバックループが崩壊することによって制御を失った腎外の臓器が暴走し始める.それが副甲状腺機能亢進症であり,腎性骨症とよばれる代謝性骨疾患群である.

 ベッドサイドでみられる透析患者の骨・ミネラル代謝異常はさらに複雑である.腎機能を喪失すると副甲状腺ホルモンの腎作用が欠落するだけでなく,骨に対する作用も著しく鈍麻する.加えて小腸のカルシウム吸収は腎で1α水酸化されて活性型フォームとなる1,25(OH)2D依存性であるため,腎不全患者は無治療ならば低カルシウム血症となるはずである.ところが今日,活性型ビタミンD製剤の服用によって消化管カルシウム吸収作用はほぼレスキューされ,しかも透析液からもカルシウムが補充されうることから,低カルシウム血症傾向を示す症例は決して一般的ではなくなった.

 一方,血清無機リン値は体外との出納に大きく依存するため,腎からの排泄機能を失った透析患者は原則として高リン血症を呈する.これは通常の血液透析では十分に除去しえない.また,これを代償するために副甲状腺機能が亢進してもリンが尿中に排泄されないので高リン血症は解消されない.さらに,病態の初

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