診療支援
治療

3 慢性糸球体腎炎症候群
chronic glomerulonephritis syndrome
鈴木 祐介
(順天堂大学教授・腎臓内科学)

疾患を疑うポイント

●蛋白尿や(糸球体性)血尿などの慢性に持続する尿所見異常.

●感冒,上気道感染後の肉眼的血尿.

●ネフローゼ症候群などに伴う腎性浮腫の出現.

学びのポイント

●慢性糸球体腎炎症候群は,蛋白尿,血尿が慢性に持続する臨床診断であり,その原因疾患は腎生検による組織診断によって診断.

●発症からの経緯で,急性糸球体腎炎症候群や,急速進行性糸球体腎炎症候群と区別される.それらが最終的に慢性経過をたどる場合には,慢性糸球体腎炎症候群と判断される.

▼定義

 長期にわたる腎糸球体の炎症に起因する蛋白尿や(糸球体性)血尿の持続に伴い,腎機能障害やこれに伴う高血圧などの症候を示す症候群.

▼病態

 慢性糸球体腎炎症候群は,臨床診断名である.慢性に尿所見異常を惹起する糸球体炎症の原因は多岐にわたる.原発性糸球体腎炎の原因を特定するためには,腎生検による病理診断を要する.原発性糸球体腎炎の病理学的基本病型は,表9-30に示す7つである.メサンギウム増殖性糸球体腎炎においては,糸球体にIgAが沈着するIgA腎症と,非IgA型糸球体腎炎に分けられる.ここでは,本邦で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であるIgA腎症の病態について触れる.

 IgA腎症は,糸球体メサンギウム領域にIgAが優位に染色されるメサンギウム増殖性糸球体腎炎として定義づけられている.大部分の症例は,血尿で発症し,徐々に蛋白尿の合併を示す.近年の研究により,糸球体に沈着するIgAは,主にヒンジ部のガラクトース修飾異常を伴う糖鎖異常IgA1であることが判明している.同時にIgA腎症患者では,この糖鎖異常IgA1に反応する内因性IgG/IgA抗体も増加しており,それらと糖鎖異常IgA1によって形成される免疫複合体も糸球体に沈着し,炎症を惹起していると考えられている.下腿を中心とした紫斑で発症し,蛋白尿・血尿を伴う紫斑病性腎炎の糸球体組織は

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