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治療

【1】糸球体障害の病態生理(総論,免疫含む)
pathophysiology of glomerular diseases
淺沼 克彦
(千葉大学大学院教授・腎臓内科学)

▼症候診断(臨床症候分類)

 原発性糸球体障害では,糸球体が免疫学的機序あるいは非免疫学的機序により障害を受け,蛋白尿・血尿・腎機能障害が起こる.糸球体障害には,腎臓に障害が限局する原発性〔原因が不明の場合は特発性(idiopathic)〕糸球体疾患と全身性疾患〔糖尿病などの代謝性疾患,全身性エリテマトーデスなどの膠原病,抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)や紫斑病に伴う血管炎〕,二次性(secondary)および,遺伝性(genetic)であるAlport(アルポート)症候群や菲薄基底膜症候群に分類される.

‍ 糸球体腎炎(glomerulonephritis)の分類は,まず臨床経過を基準とした急性,亜急性,慢性に分類される.慢性糸球体腎炎のなかには,病因による疾患名が同じであってもさまざまな病理組織像を示すものがある.しかし,糸球体腎炎のすべての患者が腎生検検査を受けて病理組織学的診断がなされるわけではではないので,WHO臨床症候分類で①急性腎炎症候群,②急速進行性腎炎症候群,③無症候性血尿・蛋白尿,④慢性腎炎症候群,⑤ネフローゼ症候群の5つの症候群に分類される(表9-27)

急性腎炎症候群(acute nephritic syndrome)

 (顕微鏡的または肉眼的)血尿・蛋白尿といった腎炎症候に,高血圧や浮腫などの症状が急激な経過(日の単位)で出現し一過性の腎機能(糸球体ろ過量:GFR)の低下を認めるものをいう.急性腎炎症候群の代表例は,溶連菌感染後急性糸球体腎炎(poststreptococcal acute glomerulonephritis:PSAGN)であるが,この症候群を示すほかの糸球体疾患もあることに注意が必要である.

急速進行性腎炎症候群(rapidly progressive nep

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