診療支援
治療

(1)良性腎硬化症
benign nephrosclerosis
長田 太助
(自治医科大学教授・腎臓内科学)

学びのポイント

●良性腎硬化症は,高血圧歴の長い高齢者に好発し,蛋白尿は高度でないことも多い.

●悪性腎硬化症(悪性高血圧症)は,急激な血圧上昇・腎不全を含む臓器障害を伴い,レニン-アンジオテンシン系の亢進によりさらなる血圧上昇の悪循環をきたす疾患.

●コレステロール塞栓症は,一般的な動脈硬化のリスクがある患者に,血管内操作などを施行した場合に生じることが多い.

▼定義

 慢性の高血圧が,微小血管,糸球体,尿細管を障害することによって生じる進行性の腎障害のことを指す.高血圧性腎硬化症と同義である.

▼病態・疫学

 腎臓は高血圧の原因臓器でもあるが,高血圧の被害臓器でもある.高血圧に曝露された血管の動脈硬化性変化によって,腎実質に虚血性障害が惹起される.病理学的には小葉間動脈~輸入細動脈レベルでの動脈硬化がみられ,糸球体硬化や尿細管萎縮,間質線維化を伴う.したがって高齢の高血圧歴が長い患者の頻度が高い.

▼診断

 高血圧歴,年齢,臨床所見から診断し,確定診断のための腎生検は一般的ではない.高血圧性眼底所見や左室肥大を合併していることは診断の傍証となる.初期には尿検査異常はないが,次第に微量アルブミン尿が,さらに進行すると軽度の蛋白尿(<1g/日)がみられるようになる.一方,尿沈渣では血尿や病的円柱はみられないことが多い.血圧管理不良例や高度肥満者などでは中等度以上の蛋白尿がみられる場合,腎機能低下が速い.非典型例では,鑑別に腎生検が有用なこともあるが,両側腎萎縮のため腎生検が不可能な例も多い.

▼治療

 治療目標は腎機能低下の抑制,心血管リスクの低減である.糖尿病非合併のCKD患者の場合は,140/90mmHg未満に維持するよう推奨されるが,蛋白尿陽性例ではさらに厳格な130/80mmHg未満を目指す.糖尿病合併でも130/80mmHg未満が降圧目標である.降圧薬治療は,原則的に蛋白尿陽性例,糖尿

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