診療支援
治療

1 顕微鏡的多発血管炎
microscopic polyangiitis(MPA)
要 伸也
(杏林大学教授・腎臓・リウマチ膠原病内科学)

疾患を疑うポイント

●腎病変のほか,全身症状(発熱,体重減少,関節炎など),皮膚症状(紫斑など),しびれや臓器病変(肺,消化管,中枢神経など)がみられる.約40%は腎型(renal-limited vasculitis)である.

●腎病変は,典型的にはRPGNの経過をとる.

●わが国ではほとんどがMPO-ANCA陽性型であるが,少数ながらPR3-ANCA陽性の場合や,両者ともに陰性のこともある.

学びのポイント

●小型血管炎の1つで,ANCA関連血管炎に分類される.

●腎病変の頻度が高い.臨床的にRPGNの経過をたどり,病理学的にはpauci-immune型壊死性半月体形成性糸球体腎炎の像を示す.

●治療は副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬の併用が基本である.治療が遅れると腎予後は不良.

▼定義

 全身の小型血管を侵すANCA関連血管炎の1つで,糸球体腎炎(ANCA関連腎炎)のほか,肺病変をしばしば伴う.肉芽腫病変がみられれば,多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)に分類される.

▼病態

 自己抗体であるANCAが病態形成に重要な役割を果たす.発症機序には不明な点も多いが,なんらかの遺伝・環境要因により産生されたANCAが,好中球細胞膜上に表出した抗原(MPO,PR3)に結合することにより,補体依存性に好中球が活性化され,局所の血管内皮に集積・接着ののち壊死性血管炎を生じ,皮膚,腎臓,肺,神経,上気道などに虚血や出血による障害を引き起こす.

▼疫学

 男女比はほぼ同頻度(1:1.2)で,好発年齢は55~74歳と高齢者に多い疾患である.

▼分類

 罹患部位により全身型と腎単独型とに分けられる.臨床的には急速進行性腎炎症候群に属する.

▼症状・所見

 症状・所見は,全身症状と臓器病変に基づく局所症状に分けられる.前者には,発熱,体重減少,倦怠感,関節炎がある

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