疾患を疑うポイント
●MPAと同様,血管炎による全身症状,関節炎,上気道症状,肺出血,腎炎のほか,紫斑,しびれなどを認める.特に中耳炎,難聴,副鼻腔炎など耳鼻咽喉科領域に症状がみられる頻度が高い.
●腎炎は典型的にはRPGNの経過をとる.
●大部分でANCA陽性となり,わが国ではそのうち半数以上はMPO-ANCAである.
学びのポイント
●ANCA関連血管炎(特にPR3-ANCA)の1つで,主要症状として血管炎の全身症状と上気道症状,肺,腎臓などの臓器症状がある.
●病理所見では壊死性血管炎と肉芽腫形成が特徴.
●治療は副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬(シクロホスファミド,リツキシマブ薬など)の併用が基本.
▼定義
全身の小型血管を侵すANCA関連血管炎の1つで,腎炎のほか,上気道病変,肺病変をしばしば伴う.肉芽腫病変がみられる.古くからWegener(ウェゲナー)肉芽腫症とよばれていたが,2012年多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)に改称された.
▼病態
ANCAが病態形成に関与し,顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)と同様の機序が想定されている.GPAで肉芽腫が形成される機序は不明である.
▼疫学
男女比はほぼ1:1で,好発年齢は40~60歳と中年~高齢者に多い.
▼分類
PR3-ANCA陽性のGPAと,MPO-ANCA陽性のGPAに分類できる.罹患臓器により,全身型,限局型に分けることもできる.
▼症状・所見
症状・所見は,全身症状と臓器病変に基づく局所症状に分けられる.前者には,発熱,体重減少,倦怠感がある.局所症状は,気道症状(E),肺の症状(L),腎の症状(K)がみられるが,その他紫斑,多発関節痛,多発性単神経炎,消化管出血,肥厚性硬膜炎などがある.
●E:副鼻腔炎(膿性鼻漏,出血など)
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/1 顕微鏡的多発血管炎
- 治療薬マニュアル2024/リツキシマブ(遺伝子組換え)《リツキサン》
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/10 血管炎
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)
- 臨床検査データブック 2023-2024/抗好中球細胞質抗体〔ANCA〕 細胞質性抗好中球細胞質抗体〔PR3-ANCA,c-ANCA〕 [保] 259点
- 新臨床内科学 第10版/3 多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)
- 新臨床内科学 第10版/血管炎に基づく腎病変
- 新臨床内科学 第10版/1 顕微鏡的多発血管炎
- 新臨床内科学 第10版/3 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
- 新臨床内科学 第10版/5 結節性多発動脈炎
- 新臨床内科学 第10版/7 紫斑病性腎炎(IgA血管炎,ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)
- 新臨床内科学 第10版/7 多発血管炎性肉芽腫症
- 新臨床内科学 第10版/(2)IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)
- 新臨床内科学 第10版/(1)結節性多発動脈炎