▼定義
尿細管性アシドーシスは,先天性あるいは後天性の要因によって尿細管の機能が障害されて代謝性アシドーシスをきたす疾患の総称である.
▼病態
遠位尿細管性アシドーシス(1型RTA),近位尿細管性アシドーシス(2型RTA),高カリウム血症を呈する4型尿細管性アシドーシス(4型RTA)に大別される.
腎集合管のα-間在細胞は尿細管腔側にプロトンポンプ(H+-ATPase)を,反対側にCl-/HCO3-交換輸送体(AE1)を発現し,これらの分子の働きにより酸の排泄を担っているが(図9-56図),この機構が障害されると1型RTAをきたす.主な原因疾患を表9-50図に示す.1型RTAでは皮質集合管でのH+分泌低下に伴って代償性にK+の分泌が促進されるために低カリウム血症を伴う.また高カルシウム尿症や尿中クエン酸排泄の低下に伴い腎石灰化や腎結石を合併しやすい.
近位尿細管では重炭酸が再吸収されており,この機構の障害は2型RTAの原因となる.一次性の障害としてはNa+/HCO3-共輸送体(NBC1)の遺伝子変異が知られており,二次性の障害としては多発性骨髄腫やアミロイドーシス,化学療法に伴う薬剤腎障害に伴うものの頻度が高い(表9-50図).二次性では低リン血症,低カリウム血症,低尿酸血症,尿糖陽性,アミノ酸尿など,近位尿細管機能の全般性障害〔Fanconi(ファンコーニ)症候群〕を呈することが多い.
4型RTAはアルドステロンの欠乏あるいは集合管のアルドステロンに対する反応性の低下に由来する.一次性の原因は塩類喪失を呈する偽性低アルドステロン症1型(pseudohypoaldosteronism:PHAⅠ)と,高血圧を呈する偽性低アルドステロン症2型(PHAⅡ)とに分けられる.PHAⅠはアルドステロンの受容体である鉱質コルチコイド受容体(mineralocorticoid rece
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