▼分類・診断
1999年発表の米国NIH分類に沿って記述する.
急性細菌性前立腺炎(カテゴリーⅠ)は,頻尿や排尿痛など膀胱炎症状と膿尿がみられ,発熱をきたす急性炎症病態である.高熱・尿閉をきたすような高度感染病態では放置すると敗血症に至る場合もある.慎重に直腸指診(菌血症誘発を避けるため,前立腺を圧迫しないこと)すると前立腺に腫大と圧痛がある.
慢性細菌性前立腺炎(カテゴリーⅡ)は,前立腺が菌のリザーバーとなり,増悪すると膀胱炎を起こす.普段から,会陰部,下腹部,陰部周辺に慢性の痛みを伴う場合も多い.経直腸前立腺マッサージ後の初尿中に白血球と尿路病原性細菌を認める.
慢性非細菌性前立腺炎(カテゴリーⅢ)は,前立腺マッサージ後の初尿中に尿路病原性細菌を認めないもので,その初尿中白血球(膿尿)の有無でⅢA(炎症性)とⅢB(非炎症性)とに分類される.慢性骨盤痛症候群(chronic pelvic pain syndrome:CPPS)ともいい,慢性細菌性前立腺炎と同様に性器・会陰部を中心とする痛みを訴える.
▼原因菌
細菌性前立腺炎の多くは腸内細菌が原因で,なかでも大腸菌の頻度が最多である.
▼治療
➊急性細菌性前立腺炎
軽症ではフルオロキノロン系経口薬,重症ではセファロスポリン系などの注射薬が第一選択となり,empiric therapyを開始する.そして尿培養結果に合わせてdefinitive therapyへと切り替える.入院させて注射薬で開始した場合,症状寛解後(おおむね3~7日後)に経口抗菌薬に変更し,治療期間は合計で14(~28)日間とする.
➋慢性細菌性前立腺炎
前立腺組織移行が良好なフルオロキノロン系経口薬の内服が用いられる.これら経口薬の投与期間は2~4週間が目安である.
➌慢性非細菌性前立腺炎
決め手となる治療法が確立されていないが,α1ブロッカーなどが有効なこと