診療支援
治療

1 腎細胞癌
renal cell carcinoma
中川 徹
(帝京大学教授・泌尿器科学)

▼定義

 腎実質(主として尿細管)を発生母地とする上皮性悪性腫瘍.

▼病態

 初期には無症状である.増大すると血尿・疼痛(側腹部痛)・腹部腫瘤触知という古典的三徴を呈するが,近年はそのような進行癌症例は少ない.悪性度の高い症例では,発熱・体重減少・貧血などの炎症性の全身症状,PTHrP産生による高カルシウム血症,肝機能障害〔Stauffer(スタウファー)症候群〕などの腫瘍随伴症候群を呈することがある.

 静脈侵襲の頻度が高く,腎静脈から下大静脈内にかけて腫瘍栓を形成することがある(図9-61).腫瘍栓が右心房に達する症例もある.腫瘍栓のため左腎静脈から左精巣静脈の内圧が上昇すれば左精索静脈瘤を呈しうる.

 転移様式は血行性が多い.転移部位としては肺が最も多く,ついで骨,リンパ節,肝,脳の順.

▼疫学

 わが国では成人悪性腫瘍の2~3%を占める.罹患率は40~50歳代から増加し,70歳代前半に最多となる.若年者や,まれに小児にも発症する.男女比2~3:1で男性に多い.発癌のリスク因子として,肥満,喫煙,高血圧などが知られている.長期透析患者にみられる後天性囊胞性腎疾患(acquired cystic disease of kidney:ACDK)では腎細胞癌の発生頻度が高い.

 孤発例が大半を占める.遺伝性では,von Hippel-Lindau(フォン・ヒッペル-リンドウ:VHL)病に伴うものが有名である.

▼分類

 病理組織学的には,淡明細胞型(clear cell)が約70~85%を占める.淡明細胞型腎細胞癌の家族性発症を示すVHL病の研究から,原因遺伝子としてVHL遺伝子(3番染色体短腕,3p25-26)が同定された.ほかに,乳頭状(papillary,約15%),嫌色素性(chromophobe,約5%),集合管癌〔Bellini(ベリニ)管癌,1%未満〕などがある.紡錘細胞型は,

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