▼定義
腎盂・尿管の尿路上皮より発生する悪性腫瘍.
▼病態
病理組織学的には膀胱癌と同じ尿路上皮癌(移行上皮癌)である.尿路上皮癌は,腎盂・尿管から膀胱・尿道に至る尿路上皮全体での「空間的・時間的多発性」を特徴とする.腎盂癌症例のおよそ15~50%が経過中に膀胱癌を,2~6%が対側の腎盂・尿管癌を生じる.逆に膀胱癌症例の約2~4%が腎盂・尿管癌を発症する.初診時にすでに腎盂から尿管・膀胱に腫瘍が多発している症例もある.
多発性の原因は,癌細胞が尿流にのって播種したものが多い.しかし,多発癌の一部は,喫煙などに由来する尿中変異原性物質の長期曝露により,尿路上皮全体の発癌ポテンシャルが高まっていることにもよるとされる(フィールド仮説).
転移経路はリンパ行性が主体で,腹部大動脈・下大静脈周囲リンパ節や骨盤内リンパ節に転移する.血行性転移は肺や骨に多い.
▼疫学
同じ尿路上皮癌である膀胱癌と比べると発生頻度は低く,尿路上皮癌全体の5~10%程度である.腎盂癌と尿管癌の比率は2:1とされる.50~70歳代が最多で,男女比約2:1で男性に多い.
発症の危険因子として,喫煙,医薬品(フェナセチン,アリストロキア酸を含む漢方薬),結石などによる慢性炎症,化学発癌物質の曝露,職業性発癌(芳香族アミン)が挙げられる.喫煙や芳香族アミンの職業性曝露は,同じ尿路上皮癌である膀胱癌と共通している.特に喫煙は最も重要な危険因子である.
▼分類
病理組織学的にはほとんどが尿路上皮癌(移行上皮癌)である.結石による慢性炎症に起因する場合は扁平上皮癌が多い.腺癌は一層まれである.
▼診断
発見の契機は無症候性肉眼的血尿が多い.腫瘍や凝血塊により尿管が閉塞した場合は水腎症となり,側腹部痛を呈しうる.
初期診断として尿細胞診と画像検査を行う.画像検査では,造影剤を用いたCTウログラフィが第一選択である(図9-63図)
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