診療支援
治療

5 膀胱癌
urinary bladder cancer
宮嶋 哲
(東海大学教授・泌尿器科学)

疾患を疑うポイント

●無症候性肉眼的血尿を契機に発見されることが多い.

学びのポイント

●膀胱癌は全悪性腫瘍の1~1.5%を占める.90%以上が尿路上皮癌であるが,ほかに扁平上皮癌,腺癌がある.

▼定義

‍ 尿路上皮に発生する癌であり,腎盂,尿管,膀胱,尿道粘膜に発生する.再発頻度が高い.

▼病態

 膀胱に発生した尿路上皮癌がほとんどであり,尿路上皮粘膜に発生した癌が粘膜を越え浸潤すると転移をきたす.組織学的異型度(グレード)や脈管浸潤(lymphovascular invasion:LVI)と癌の進達度は相関することが多い.組織学的異型度と深達度は予後と関連し,治療法の選択に際し重要である.リンパ行性転移ならびに血行性に肺・骨に転移巣を形成しやすい.

 組織学的異型度を,細胞異型と構造異型の両方の観点からグレードgrade 1~3に分け,腫瘍の浸潤度(深達度)は,TisからT4までに分類する(TNM分類).

▼疫学

 高齢者特に60歳代に多く,2008年の年齢調整罹患率は7.2で,女性に比べ男性に4倍多い.

 染料に含まれる芳香族アミンによる化学発癌喫煙がリスク因子である.

▼診断

 無症候性血尿がみられ,進行すると血塊や腫瘍塊のために排尿困難をきたす.また,頻尿や排尿痛などの膀胱炎症状を示す場合もある.

 経尿道的膀胱粘膜生検による病理組織学的確証により確定診断となる.

 内視鏡所見が判然としない場合は尿細胞診ならびに経尿道的膀胱粘膜生検が有用である.

 浸潤度ならびに病期の決定にはCT,MRIが有用である.

▼治療

 表在性膀胱癌,いわゆる筋層非浸潤性膀胱癌(図9-64,65)には,経尿道的膀胱腫瘍切除術(transurethral resection of bladder tumor:TUR-BT)が行われる.

 筋層浸潤性膀胱癌に対しては,ゲムシタビンとシスプラチンによる抗がん化学療法(GC

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