診療支援
治療

6 前立腺肥大症
benign prostatic hyperplasia(BPH)
宮嶋 哲
(東海大学教授・泌尿器科学)

疾患を疑うポイント

●加齢とともに有病率は上昇し,男性ホルモンによって増大する.

●残尿感,尿線狭小(図9-66),頻尿などの排尿障害を主訴とする.

学びのポイント

●加齢に伴う進行性の良性疾患であり,他内科的疾患と合併することが多い.

●治療法は薬物療法,内視鏡手術であり,その適応となる潜在的患者数は多い.

▼定義

 尿道周囲組織と前立腺移行領域の腺組織の増大に伴い,排尿障害をきたす良性疾患である.

▼病態

 精巣から分泌された男性ホルモンであるテストステロンが5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone:DHT)に変換され,DHTの刺激により前立腺は増大する.

 前立腺部尿道を取り巻く尿道周囲組織と前立腺移行領域(transition zone:TZ)の腺組織が増大し症状が惹起される.

 成人男性の正常前立腺の体積は20cc前後であるが,加齢とともに徐々に増大し,100ccを超えるものもある.

▼疫学

 中高齢の男性に認める進行性の疾患であり,組織学的有病率は70歳代男性で70%,80歳代で90%.

 症状が進行すると尿閉をきたす.その危険因子は,高齢,IPSSが重症,最大尿流量≦12mL/秒,前立腺体積≧30ccである.

▼診断

国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score:IPSS)

 前立腺肥大症に対する症状質問票であり,重症度判定,治療方針の決定,治療効果判定に用いられる.IPSS合計点数が0~7点,8~19点,20点以上をそれぞれ軽症,中等症,重症と評価する.QOLスコアは現在の排尿状態に対する患者の満足度を示す指標であり,IPSSとQOLを包括的に考慮する(表9-55)

尿流量測定(uroflowmetry:UFM)

 低侵襲で排尿状態の客観的定量的な評価に有用である.前立腺肥大症では尿流量の低下,

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