▼定義
腎臓は尿濃縮機能などを有し,そこには大量の血液が流入しており,そのために体内に入った薬剤は腎臓に高濃度に流入し蓄積されやすい.したがって,腎臓は薬剤やその代謝産物からの影響を受けやすい臓器である.また,近位尿細管などに存在する代謝酵素によって代謝される薬剤は,その部位の障害を引き起こしやすいと考えられている.発症機序および腎病理所見から薬剤性腎障害を分類すると図9-67図のようになるが,臨床的には急性尿細管壊死,間質性腎炎,腎前性腎不全,閉塞性腎不全は急性腎不全,慢性尿細管間質性腎炎は慢性腎不全,糸球体障害はネフローゼ症候群の症状を示すことが多い.
薬剤性腎障害の発症にかかわる危険因子としては,既存の腎機能低下,糖尿病,脱水,多発性骨髄腫,高血圧,高齢者,うっ血性心不全などが知られている.抗菌薬による腎障害の被疑薬としては,アミノグリコシド系抗菌薬,グリコペプチド系抗菌薬,β-ラクタム系抗菌薬が多く,アミノグリコシド系抗菌薬,グリコペプチド系抗菌薬,セフェム系抗菌薬,利尿薬の併用は腎毒性の頻度が増加すると報告されている.
▼病態
抗菌薬による腎障害は,急性尿細管壊死(用量依存性直接型腎障害で,アミノグリコシド系抗菌薬やグリコペプチド系抗菌薬が代表である)と,間質性腎炎(薬剤性過敏型腎障害)は,β-ラクタム系抗菌薬が代表で,ニューキノロン薬も含まれる.ほかには,アムホテリシンB薬薬による遠位尿細管性アシドーシス(遠位尿細管障害),変性テトラサイクリンによるFanconi(ファンコーニ)症候群(近位尿細管障害で,低分子蛋白尿,尿糖,汎アミノ酸尿,リン酸尿,近位尿細管性アシドーシスを呈する)などがあり,ニューキノロン薬では抗好中球細胞質抗体腎炎を起こすとの報告がある.
関連リンク
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