▼定義
腹腔内臓器や後腹膜臓器の腫瘍の治療を目的とした大量放射線療法によって発生する腎症.腎機能低下,高血圧,蛋白尿などが認められる.
▼病態
腎臓はほかの臓器より放射線の感受性が高く,腎障害は腎組織の炎症と変性をきたす.通常成人では1か月に20~30グレイの放射線照射が加わった場合,約50%に発症するとされる.放射線障害に対する感受性は個体差があり,また年齢が若いほど感受性が高くなるため,小児においては特に注意が必要である.放射線療法と併用される化学療法で用いられるドキソルビシンやブレオマイシンなどの抗癌剤も腎毒性を増強する.近年は腎臓への照射防御により以前より重篤な放射線性腎症が減少している.
➊急性放射線腎炎
20グレイ以上の高用量の放射線照射を受けたのち,6~12か月後に発症する.
高血圧が最初の徴候で加重型重症高血圧症(悪性高血圧症)や心不全を合併することもある.浮腫,頭痛,労作時呼吸困難を訴え,軽度から中等度の蛋白尿がみられることもある.一部は慢性放射線腎炎に移行し,進行性腎機能障害で腎不全に至る.溶血性貧血,血小板減少,尿毒症などの溶血性尿毒症症候群の病態を呈する場合もある.以前は急性放射線腎炎は予後不良であったが,近年の降圧療法の進歩と急性期の透析療法・血液浄化療法の適応により予後は改善している.
➋慢性放射線腎炎
慢性放射線腎炎は急性放射線腎炎の慢性化の他に,放射線照射後,10年以上の経過で潜行性に起こることがある.倦怠感,低張尿,夜間尿を呈し,尿中Na喪失,高尿酸尿症を生じて慢性に腎機能が低下する.放射線障害に伴う後腹膜組織の線維化,神経因性膀胱,尿管閉塞が合併すると尿管逆流障害でさらに腎機能障害を促進することがある.
▼治療
確立した治療法はないが,ACE阻害薬やARBなどのレニン-アンジオテンシン系阻害薬が有効であるとの報告が多い.血中レニン活性の上昇や加重
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