診療支援
治療

1 脳動脈瘤
cerebral aneurysm
鈴木 秀謙
(三重大学大学院教授・脳神経外科学)

▼定義

 脳動脈が病的に拡張した状態である.

▼病態

 多くは脳動脈分岐部に存在する器質的脆弱性(中膜欠損)に高血圧などの血行力学的ストレスが加わり発生するとされる.高血圧のほか,喫煙,過度の飲酒(150g以上/週)が危険因子となる.

▼疫学

 年間発生率は10~20人/人口10万人だが,加齢とともに増加する.わが国ではくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)発症のピークは男性で50歳代,女性で70歳代である.女性に多い.前交通動脈瘤(30%)および内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(25%)が多く,椎骨・脳底動脈系の動脈瘤は少ない(5%).多発性脳動脈瘤は約20%にみられる.

▼分類

 形態的に囊状と紡錘状に分類されるが,破裂するのはほとんど囊状のものである.

▼診断〔本章「くも膜下出血」の項()を参照〕

 典型的SAHの発症数時間~数週前に微小出血〔minor leak.警告頭痛(warning headache)とも〕が生じることがある(SAH患者の30~60%).突然の動脈瘤側の頭痛や眼窩周囲痛であることが多く,片頭痛と誤診されやすい.内頸動脈瘤の場合,同側の動眼神経麻痺(散瞳>複視>眼瞼下垂の順で出現)を伴うこともある.単純CTでSAHを認めなくても本症を疑い,脳動脈瘤を除外することは重要である.

 なお,脳動脈壁の脆弱性や血行力学的ストレスに関連する多発性囊胞腎大動脈縮窄症などを伴うことがある.

▼治療

 可及的早期に開頭クリッピング術または瘤内コイル塞栓術を行い,再破裂を防ぐ.その後は神経原性肺水腫,カテコールアミン心筋症,不整脈などに対する全身管理を行い,続発する脳血管れん縮,遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia:DCI)や正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus:NPH)などに対する治療を

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