診療支援
治療

アテローム血栓性脳梗塞
atherothrombotic cerebral infarction
坂本 悠記
(日本医科大学・脳神経内科)
木村 和美
(日本医科大学大学院教授・脳神経内科)

疾患を疑うポイント

●動脈硬化リスクの高い成人に生じた,意識障害,皮質症状,片麻痺や構音障害などの症状.初発症状が短時間で消失する一過性脳虚血発作であることも多い.

●頭頸部画像検査では,頭頸部血管に動脈硬化に起因する狭窄・閉塞を認め,その血管の灌流域に多発する小梗塞を認めることが多い.

学びのポイント

●初発症状は比較的軽度であることが多く一過性脳虚血発作で終わることも多いが,症状の進行・再発のリスクが高く,またそのリスクを内科的・外科的治療で劇的に減少させることができる可能性があるため,見逃してはならない疾患.

▼定義

 「アテローム」とは,中~大型動脈の内膜に生じた,結合組織や結晶化したコレステロール,細胞成分や血小板,フィブリンが蓄積したもので,プラークと同義である.頭頸部血管に,このプラークによる50%以上の狭窄(血管径の半分以上がプラークで占められている)があり,その血管の灌流領域にのみ脳梗塞巣を認める場合,アテローム血栓性脳梗塞と診断する.

▼病態

 プラーク上に形成された血小板血栓が遊離して末梢の血管を閉塞させることにより,小梗塞を生じる.また,プラーク内出血などでプラークが急に増大した場合は,プラークが存在する箇所で血管を閉塞してしまい,比較的大きな梗塞を生じる.

▼疫学

 脳梗塞患者のうち,アテローム血栓性脳梗塞は約1/3を占める.2000年頃と比較して,ラクナ梗塞は減少,心原性脳塞栓症は増加しているが,アテローム血栓性脳梗塞の割合は変化していない.

▼分類

‍ 病態にも記載したように,プラーク上に形成された血小板が遊離し,末梢に小梗塞を形成するアテローム血栓性塞栓〔またはartery-to-artery(A-to-A)embolism〕と,プラーク破綻によってプラーク存在部位で血管を閉塞するアテローム血栓性梗塞に分類される(図10-14).また,50%以上の狭窄が頭蓋内血管

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