疾患を疑うポイント
●突然発症する一側半身の麻痺,感覚障害,構音障害,運動失調をみた場合にラクナ梗塞を疑う.
●脳CT,MRI画像で脳深部領域に1.5~2.0cm未満の脳梗塞を認める.
●健診で脳MRI画像を撮影すると,高齢者では神経症状を呈さない脳梗塞(無症候性脳梗塞)がしばしばみつかるが,その大部分の発症機序はラクナ梗塞と共通である.
学びのポイント
●ラクナ梗塞の本態は脳深部を灌流する穿通枝動脈(直径500μm未満)が細動脈硬化,微小粥腫によって血栓性閉塞をきたすことにより,その灌流領域に虚血性壊死を起こすことである.
●古典的ラクナ梗塞症候群は純粋運動性不全片麻痺,純粋感覚性卒中,失調性片麻痺,構音障害・手不器用症候群,感覚運動性卒中からなる.
●発症危険因子は,加齢と高血圧であり再発予防には血圧管理と抗血小板療法が重要である.
▼定義
脳深部を灌流する穿通枝動脈の閉塞による最大径が15~20mm未満の脳梗塞である(図10-18図a).同様なサイズの脳梗塞が皮質や皮質下に存在する場合はラクナ梗塞とはよばない.
▼病態
穿通枝動脈の血栓性閉塞が原因と考えられ,穿通枝動脈の細動脈硬化のリスクとしては年齢,高血圧が最も重要である.穿通枝動脈は他血管との吻合の乏しい終末動脈であるので閉塞によりその灌流領域に一致した脳梗塞が発症することになる.穿通枝動脈は脳小血管に分類され,脳小血管病は脳小血管の閉塞,機能不全により生じる疾患の総称であり,ラクナ梗塞以外に脳白質病変,微小出血,血管周囲腔拡大が含まれる.加齢と高血圧が共通の危険因子であり,ラクナ梗塞患者ではしばしば白質病変,微小出血を合併する.
➊脳小血管病
脳実質を灌流する血管径数百μm以下の小動脈,細動脈,毛細血管,毛細血管後細静脈を総称して脳小血管とするが,この血管病変によって引き起こされる病変を脳小血管病としている.神経症候を呈し脳卒中に
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