▼発生機序
脳動脈あるいは頸部動脈の狭窄・閉塞は主としてアテローム血栓性脳梗塞(atherothrombotic infarction:ATI)における中心的病態である.ATI患者の多くは基礎疾患として高血圧症,糖尿病,脂質異常症,また喫煙習慣などを有し,年月をかけて脳動脈や頸部動脈に粥状動脈硬化をきたす.ATIは冠動脈疾患,末梢動脈疾患などを合併することも多く,粥状動脈硬化を基盤とするこれらの疾患全体をATIS(atherothrombosis,アテローム血栓症)とよぶことも提唱されている.粥状硬化は脂質がLDLの作用で血管内膜下に沈着することから始まる.脂質を貪食したマクロファージが泡沫細胞となり,その破綻により放出された蛋白分解酵素が組織を融解し,粥腫(plaque)が形成される.粥腫は徐々に拡大し,血管内腔に狭窄を起こす.狭窄部の血流速度は速くなり,生じた乱流により内皮障害が促進さ