診療支援
治療

6 脳動脈狭窄・閉塞
stenosis and obstruction of cerebral artery
奥田 聡
(国立病院機構東名古屋病院・院長)

▼発生機序

 脳動脈あるいは頸部動脈の狭窄・閉塞は主としてアテローム血栓性脳梗塞(atherothrombotic infarction:ATI)における中心的病態である.ATI患者の多くは基礎疾患として高血圧症,糖尿病,脂質異常症,また喫煙習慣などを有し,年月をかけて脳動脈や頸部動脈に粥状動脈硬化をきたす.ATIは冠動脈疾患,末梢動脈疾患などを合併することも多く,粥状動脈硬化を基盤とするこれらの疾患全体をATIS(atherothrombosis,アテローム血栓症)とよぶことも提唱されている.粥状硬化は脂質がLDLの作用で血管内膜下に沈着することから始まる.脂質を貪食したマクロファージが泡沫細胞となり,その破綻により放出された蛋白分解酵素が組織を融解し,粥腫(plaque)が形成される.粥腫は徐々に拡大し,血管内腔に狭窄を起こす.狭窄部の血流速度は速くなり,生じた乱流により内皮障害が促進され,発生した「ずり応力」により血小板が活性化し血栓が形成され狭窄が進行する.粥腫拡大につれ,粥腫を覆う線維性被膜が薄くなり,粥腫破綻(plaque rupture)をきたし,急激に内腔狭窄が生じることもある.同部では血管壁に潰瘍が形成され,血栓が形成されやすい.

▼病態

 粥状硬化による動脈狭窄は緩徐に進行するため,脳血流の代償機構が働き,さまざまな側副血行路(バイパス)が形成される.Willis(ウィリス)動脈輪を介した左右間や内頸動脈系と椎骨脳底動脈系間のバイパス,眼動脈や側頭動脈を介した内頸動脈と外頸動脈間のバイパス,皮質動脈間での吻合である脳軟髄膜血管吻合(leptomeningeal anastomosis)などがある.バイパスが十分機能している場合,主幹動脈が閉塞しても無症候あるいは一過性脳虚血発作で終わることも多い.逆にバイパスで灌流されている患者では急な血圧低下や脱水により代償

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