疾患を疑うポイント
●20~40歳代の若年者の頭蓋内出血では,脳動静脈奇形の破裂を疑う.
学びのポイント
●脳動静脈奇形の治療には外科的摘出,血管内治療,放射線治療があり,単独ないし組み合わせ治療が行われる.
●重篤度の高い未破裂脳動静脈奇形は保存的に加療する.
▼定義
脳の動脈と静脈が毛細血管を介さず,ナイダス(nidus)とよばれる異常な血管塊を介して直接的につながった血管奇形.
▼病態
動静脈の短絡により静脈圧が上昇し,静脈は拡張する.ナイダスや静脈瘤が破綻して出血する.
▼疫学
発生頻度は年間10万人に1人程度とされている.20~40歳代の若年者に多く認められる.
▼分類
Spetzler-Martin(スペッツラー-マーチン)分類(表10-10図)でgrade 1~5に分類され,点数が高いほど外科的摘出での合併症率が高くなる.
▼診断
➊臨床症状
くも膜下出血や脳出血により頭痛などの髄膜刺激症状,脳局所症状(麻痺など)を生じるものが40~60%あり,けいれん発作をきたすものが35~50%認められる.
➋画像診断
MRIのT1強調画像,T2強調画像でともに,ナイダスは蜂の巣状のflow voidとして描出される.脳血管造影で,詳細な血流動態を把握する.
▼治療
手術摘出,血管内治療による塞栓,定位放射線治療がある.Spetzler-Martin分類でgradeの高いものや未破裂のものは保存的加療も選択肢となる.
▼予後
未破裂脳動静脈奇形の年間出血率は2%程度で,出血による死亡率は10%,後遺症が30%に認められる.出血直後の1年間は再出血率が6.0~17.8%に上昇する.定位放射線治療後の出血リスクは,5年目までは未治療と同程度で,6年目以降に減少する.
実習のポイント
◉必ず確認する問診事項
□けいれんの既往がないかどうか.
◉見逃してはならない身体所見
□軽微な脱力については,Barré(バ