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治療

2 海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻
cavernous sinus dural arteriovenous fistula(CS-dAVF)
峰晴 陽平
(京都大学大学院・脳神経外科学)

疾患を疑うポイント

●進行性の眼瞼の腫脹が特徴.

●50歳以上の中高年に多く,7割以上が女性.

学びのポイント

●静脈圧上昇による静脈還流障害で症状が出る.

●血管内治療により経静脈的に瘻孔部位を塞栓する.

▼定義

 海綿静脈洞周囲の硬膜で動静脈が吻合し,短絡した血管異常.

▼病態

 動脈血が海綿静脈洞に流入することで静脈圧が上昇し,海綿静脈洞と交通する眼静脈などが拡張・うっ滞して症状を呈する.病期が進行すると,脳皮質静脈への逆流が起こり,静脈梗塞や脳出血のリスクが高まる.

▼疫学

 本邦の硬膜動静脈瘻の年間発症数は10万人あたり0.29人であり,半数近くが海綿静脈洞部に発生する.欧米では別部位の病変が多い.

▼診断

臨床症状

‍ 眼静脈圧上昇に伴う症状として,眼痛,眼球結膜充血,眼瞼浮腫,視力障害が挙げられる.海綿静脈洞部を通過する外転神経や動眼神経の麻痺をきたすと,複視を認めるようになる.

画像

 MRIで,片側の海綿静脈洞の信号が動脈と同程度の高信号を示す.海綿静脈洞につながる上眼静脈や浅中大脳静脈などの拡張も認められる.脳血管撮影で瘻孔部位を特定する.

▼治療

 血管内治療が第一選択である.動脈からの塞栓よりも静脈からの塞栓のほうが治癒率は高く,経静脈的コイル塞栓術が選択される.放射線治療は血管内治療や外科治療で根治できない症例に行われることがある.

▼予後

 海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の予後は良好である.他部位と異なり,静脈梗塞,脳出血,けいれんなどの重篤な症状を認めることはまれである.

▼特殊な病型

 内頸動脈海綿静脈洞瘻は,硬膜動脈ではなく内頸動脈との直接交通であり,別の病態と理解されている.外傷による内頸動脈損傷や動脈瘤の破裂が原因となる.頭部外傷の0.2~0.3%に認められる.血管雑音,拍動性眼球突出,眼球結膜充血が三徴とされる.

実習のポイント

◉必ず確認する問診事項

□外傷歴を聞くこと.

◉見逃しては

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