診療支援
治療

8 巨細胞性動脈炎
giant cell arteritis(GCA)
北口 浩史
(倉敷中央病院・脳神経内科部長)

疾患を疑うポイント

●50歳以上の高齢者に生じた頭痛,視力低下,発熱,筋肉痛,間欠性跛行,炎症反応高値.

●診断が遅れれば失明,脳梗塞,大動脈瘤・解離に至る危険性があり,早期診断・治療が必要.

学びのポイント

●大血管を病変の主座とする疾患.

●頭蓋型(C-GCA)と大血管型(LV-GCA)および両方による血管炎症候群.

●PMRを併発する.

●副腎皮質ステロイドの治療が標準的である.

▼定義

 GCAは高齢者に発症し,大動脈とその分枝や,頸動脈や椎骨動脈とその分枝に炎症がみられる.

▼臨床症状

 大型から中型の血管を侵し,さまざまな症状を呈する.頭蓋型巨細胞性動脈炎(cranial-GCA:C-GCA)と大血管型巨細胞性動脈炎(large vessel GCA:LV-GCA)に分類され,両者はオーバーラップすることもある.C-GCAは,頭痛,顎跛行(食べ物を噛むときに頰に痛みが生じる),側頭動脈に怒張,索状肥厚を生じる.虚血による視神経炎のため,15~20%が失明に至る.一方,LV-GCAは,鎖骨下動脈病変で上肢痛,上肢跛行を生じる.総腸骨動脈病変は,下肢の冷感,間欠性跛行を生じる.大動脈病変は,胸痛,背部痛を生じる.また不明熱,関節痛,筋肉痛,体重減少,炎症マーカーの上昇のみの場合もある.GCAの30~50%にリウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)を合併する.GCAを疑った場合は,血圧の左右差や脈拍の異常,心臓の聴診,頸動脈や四肢の血管雑音など,「血管病変の分布」に留意しながら,診察を進める.

▼病態・病理

 自己免疫学的な機序が推測されている.病理所見としては,①多核巨細胞を含む炎症細胞浸潤,②中膜と内膜を画する内弾性板の破壊,③著明な内膜肥厚,④内腔の血栓性閉塞,⑤分節状の分布が特徴である.多くは全層性の炎症細胞浸潤を伴う.

▼疫学

 発症年齢は,50歳以上

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