診療支援
治療

9 ビンスワンガー病
Binswanger disease
脇田 英明
(藤田医科大学七栗記念病院・内科教授)

疾患を疑うポイント

●50~70歳代に発症し,認知機能障害,下肢優位のパーキンソニズムによる歩行障害,偽性球麻痺,尿失禁,自発性の低下などの精神症状を認める.

学びのポイント

●広範な白質病変を特徴とする疾患.

●ラクナ梗塞の多発による多発ラクナ梗塞型とあわせて皮質下血管性認知症に分類される.

●皮質下血管性認知症は血管性認知症の半数以上を占め,血管性認知症の主要な病型となっている.

 Binswanger(ビンスワンガー)病は1894年に動脈硬化に起因する認知症として報告され,広範な白質病変を特徴とする疾患である.ラクナ梗塞の多発による多発ラクナ梗塞型とあわせて皮質下血管性認知症に分類される.さらに,脳アミロイド血管症を加え脳小血管病に分類される.Binswanger病の病理学的変化としては,高血圧を原因とする髄質動脈の中・外膜の膠原線維の増生,中膜平滑筋細胞の脱落で,血管反応性低下による血管の土管化をきたし,白質組織の慢性低灌流の原因となる.脳実質には白質病変に加え,ラクナ梗塞,大脳基底核などの深部微小出血,脳出血を認める.神経画像検査では,白質病変は脱髄が主体ではあるが,軸索障害も伴っており,血液脳関門の障害,グリオーシスも認められる.通常のT2強調画像やFLAIR画像と比較して,拡散テンソル画像を用いることで,よりよい症状との相関が得られるとの報告がある.白質病変の重症度分類としてはFazekas(ファゼカス)の分類が用いられ,側脳室周囲病変(periventricular hyperintensity:PVH)と深部皮質下白質病変(deep and subcortical white matter hyperintensity:DSWMH)に分けて,それぞれ,グレード0~3に分類される.

 臨床的には,Binswanger病は50~70歳代に発症し,緩徐に進行するが,階段状に進

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