診療支援
治療

5 脊髄動静脈奇形
spinal arteriovenous malformation
倉石 慶太
(あいちせぼね病院・脊髄外科部長)

疾患を疑うポイント

●出血,静脈うっ血,mass effectとさまざまなパターンで発症する.

●画像検査で神経症状を説明する脊柱管狭窄などの明らかな圧迫病変がない場合には本病態を考慮すべき.

●診断はMRI(造影+/-)が基本となり,必要に応じて血管造影を行う.

学びのポイント

●頻度が少なく,発症の仕方もさまざま.診断方法もMRIで典型的な発達をしたflow voidを示す場合以外は,しばしば困難.一般的には4つに分類され,おのおので予後,治療法が異なる.

●出血性病変では発症直後に再出血する危険性は低く,緊急での根治術の必要性は高くない.

●一方,静脈うっ滞による進行性脊髄症状は遅れると不可逆的となるので,早急な診断と治療が必要.

▼定義

 脊髄周辺のさまざまな場所で起こる動静脈短絡の結果,静脈うっ血による脊髄虚血,髄内およびくも膜下出血,拡張した静脈瘤によるmass effectのため神経圧迫症状をきたす病態.

▼分類

 髄内型動静脈奇形,脊髄辺縁部動静脈瘻,硬膜動静脈瘻,硬膜外動静脈瘻の4型に分けるのが一般的である.

髄内型動静脈奇形

1)病態・疫学

 前脊髄動脈,後脊髄動脈の穿通枝および軟膜枝が栄養血管となり,軟膜下から髄内にナイダス(nidus,動静脈が短絡する異常な血管の塊)が存在する.若年発症,50%が出血発症(髄内出血>くも膜下出血).頸髄病変,高齢で出血のリスクは低い.

2)画像

 CTアンギオグラフィ,MRIの髄内flow void,血管撮影後と,それに続いたCTで髄内に拡張した血管成分を認める.

3)治療

 手術,血管内治療の2つの手法があるが,血管内治療の優位性が報告されている.完全塞栓が望ましいが,部分塞栓でも良好な予後である.血管内治療困難な症例では放射線治療も行われることがある.

脊髄辺縁部動静脈瘻

1)病態・疫学

 前脊髄動脈,後脊髄動脈の軟膜枝が栄養血管となり,脊髄表面に動

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?