診療支援
治療

4 HIV脳症
HIV encephalopathy
松浦 英治
(鹿児島大学大学院准教授・脳神経内科・老年病学)
髙嶋 博
(鹿児島大学大学院教授・脳神経内科・老年病学)

▼定義

 認知機能低下症状としてのHIV脳症は,現在HIV関連神経認知障害(HIV-associated neurocognitive disorder:HAND)として重症度別に,無症候性神経認知障害(asymptomatic neurocognitive impairment:ANI),軽度神経認知障害(mild neurocognitive disorder:MND),HIV関連認知症(HIV-associated dementia:HAD)の3つに分類されている(表10-14).HIV脳症は認知機能低下のみならず,運動機能障害,行動異常,精神症状を伴うこともあり,HIV関連脊髄症の場合は深部感覚障害や膀胱直腸障害,痙性麻痺症状などを呈する.

▼疫学

 抗レトロウイルス療法(antiretroviral therapy:ART)の導入により欧米においては1990年代には死亡率が半減し,HADも半減した.1991年以前,多施設AIDSコホート研究(MACS)にエントリーした患者の20%がHADの診断基準を満たしていたが,2001年から2003年にかけてはわずかに5%まで減少した.その後HANDの7割がANIになっていると報告されているが,一方,HAND全体の患者数がそれほど減少していないことが懸念されている.日本でもHIV感染者を対象とした多施設共同研究が2014年から2016年まで行われ(J-HAND研究),感染者のうちANIが13.5%,MNDが10.6%,HADが1.2%で,HAND全体で25.3%と報告された(AIDS発症の既往者は全体の32%).

▼リスクファクター

 CNS HIV Antiretroviral Therapy Effects Research(CHARTER)研究ではANIに該当する患者は4~5年の経過観察で認知機能正常の患者に比べて症候性のHAN

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?