診療支援
治療

1 クロイツフェルト-ヤコブ病
Creutzfeldt-Jakob disease(CJD)
岩崎 靖
(愛知医科大学・加齢医科学研究所准教授)

疾患を疑うポイント

●急速に悪化する認知機能障害に加え,視覚症状,小脳症状,錐体路/錐体外路症状,ミオクローヌスなどを呈し,数か月以内に無動性無言に至る.

●MRI・拡散強調像での大脳皮質や線条体の高信号,脳波でのPSD,脳脊髄液の総タウ蛋白や14-3-3蛋白の高値が診断の参考となる.

▼定義

‍ プリオン病は,感染性を有する異常なプリオン蛋白(prion protein:PrP)の中枢神経系への蓄積によって発症する致死的疾患の総称であり,CJDは代表的なプリオン病である.

▼病態

 CJDの臨床経過は3期に分けられる.第1期には倦怠感,ふらつき,めまい,活動性の低下などの非特異的症状がみられ,第2期に認知機能障害(記銘力障害,実行機能障害など)が進行し,ミオクローヌスが出現する.精神症状(不穏,不眠など),錐体路症状(腱反射亢進,運動麻痺,病的反射など),錐体外路症状(筋強剛,ジストニア,パーキンソニズムなど),視覚症状,小脳失調も認められる.第3期には無動性無言となり,除皮質硬直や屈曲拘縮肢位を呈し,肺炎や呼吸不全,全身衰弱で死亡する.

 脳萎縮は早期には目立たず,経過とともに進行する.病理学的には大脳皮質や線条体に海綿状変化,グリオーシス,神経細胞脱落,PrP沈着を認める.

▼疫学

 年間100万人に1人程度が発症する.発症率は全世界的にほぼ一定し,女性にやや多い.

 大部分は40歳以上で発症し,60歳代での発症が多いが,80歳以上での発症もみられる.

▼分類

 原因が不明な孤発性(特発性),感染性,遺伝性に分けられ,孤発性が約80%を占める.

 孤発性CJDは,PrP遺伝子コドン129多型(メチオニンをホモでもつMM型,バリンをヘテロにもつMV型,バリンをホモでもつVV型に分類)とPrP型(プロテアーゼ抵抗性PrPを,ウエスタンブロット解析により1型PrPと2型PrPに分類)の組み合わせによ

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