診療支援
治療

1 細菌性髄膜炎
bacterial meningitis
亀井 聡
(上尾中央総合病院・神経感染症センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●新生児から高齢者まで,全年齢で発症しうる.

●発症は,①数時間のうちに進行する劇症型,②数日かけ進行性に悪化する病型がある.

●急性発症の発熱を伴った頭痛で発症することが多く,進行すると意識障害を呈する.

●主要症状は頭痛,項部硬直,発熱,意識障害であるが,成人でこれらが揃うのは約半数である.治療開始までの時間が生命予後に大きく影響するため,症状が軽微でも,常に念頭におく.

学びのポイント

●細菌性髄膜炎は,発症から初期治療開始までの時間が患者の転帰に大きく影響するため,緊急対応を要する疾患(neurological emergency)である.治療は,その緊急性と病態を理解して臨む必要がある.

●急性の頭痛・発熱を主徴とし,髄膜刺激徴候を認め,髄液検査で多形核球優位の細胞増多を示す.

●本症を疑った場合,入院後1時間以内に適切な経験的抗菌薬治療をただちに開始する.

▼定義

 くも膜・軟膜およびくも膜下腔の細菌による炎症.急性の頭痛・発熱を主徴とし,髄膜刺激徴候を認め,髄液検査で多形核球優位の細胞増多を示す.初療が転帰に大きく影響する緊急対応疾患である.

▼病態

 髄腔内では宿主の免疫防御機構が機能しないため,血行性または直達性に髄腔内に達した細菌は急速に増殖する.本症の病態は,細菌の直接的侵襲による障害だけではなく,細菌が溶解し,細胞壁成分がくも膜下腔へ放出され,サイトカインやケモカインが分泌されることにより,宿主の免疫応答を介したサイトカイン・カスケードを生じる.このカスケードで強い炎症が惹起されるので,抗菌薬投与直前に副腎皮質ステロイド薬を併用する.感染経路は,①菌血症からの血行性と②中耳炎や副鼻腔炎など頭蓋内の近傍感染巣からの直達性がある.

▼疫学

 わが国における発症頻度は年間約1,500例.2013年4月からの本症ワクチンの定期接種化後,接種率が急速に向上(90%以上

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