診療支援
治療

(2)栄養・代謝障害による認知症
脇田 英明
(藤田医科大学七栗記念病院・内科教授)

ビタミンB1欠乏症

 ビタミンB1はエネルギー代謝に必須の補酵素である水溶性ビタミンである.その欠乏症では,中枢神経障害と末梢神経障害を発症する.中枢神経障害はWernicke(ウェルニッケ)脳症で第三脳室・中脳水道・第四脳室の周囲や乳頭体に病変を生じ,錯乱などの意識障害,運動失調,眼球運動障害を発症する.治療はビタミンB1の大量投与であり,治療が早いほど予後は良好である.治療が遅れると,中枢神経障害が残り,記銘力障害,見当識障害,健忘,作話を特徴とするKorsakoff(コルサコフ)症候群を発症する.Wernicke脳症の画像所見は第三脳室周囲の視床背内側部,中脳水道周囲,第四脳室底,乳頭体にT2強調画像やFLAIR像で高信号を認める.ガドリニウムで造影効果を呈することがあり,特に乳頭体で認められることが多い.Korsakoff症候群の原因は視床背内側核,乳頭体の障害と考えられている.画像所見では脳萎縮を認める.ビタミンB1欠乏症にはアルコール使用障害を合併しているケースが多く,ほかのビタミンの欠乏やアルコールによる神経障害の影響についても考慮する必要がある.

ビタミンB12欠乏症

 ビタミンB12はDNA合成,エネルギー産生などに必須の補酵素である水溶性ビタミンである.ヒトはビタミンB12を合成することはできないため,ビタミンB12を豊富に含む動物性食品から摂取する必要がある.高齢者では,動物性食品の摂取量減少,慢性萎縮性胃炎などがビタミンB12欠乏の原因となることがある.さらに,胃から分泌される内因子の障害,胃切除なども原因となる.経口糖尿病薬のメトホルミンが原因となることにも注意が必要である.ビタミンB12欠乏症では,亜急性脊髄連合変性症,末梢神経障害に加え,易刺激性,せん妄,抑うつ,意欲低下など多様な精神症状を呈する.認知機能低下との関連を示す疫学的なエビデンスは

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