➊ビタミンB1欠乏症
ビタミンB1はエネルギー代謝に必須の補酵素である水溶性ビタミンである.その欠乏症では,中枢神経障害と末梢神経障害を発症する.中枢神経障害はWernicke(ウェルニッケ)脳症で第三脳室・中脳水道・第四脳室の周囲や乳頭体に病変を生じ,錯乱などの意識障害,運動失調,眼球運動障害を発症する.治療はビタミンB1薬の大量投与であり,治療が早いほど予後は良好である.治療が遅れると,中枢神経障害が残り,記銘力障害,見当識障害,健忘,作話を特徴とするKorsakoff(コルサコフ)症候群を発症する.Wernicke脳症の画像所見は第三脳室周囲の視床背内側部,中脳水道周囲,第四脳室底,乳頭体にT2強調画像やFLAIR像で高信号を認める.ガドリニウムで造影効果を呈することがあり,特に乳頭体で認められることが多い.Korsakoff症候群の原因は視床背内側核,乳頭体の障害と考えられている.