診療支援
治療

2 ハンチントン病
Huntington disease
田村 麻子
(三重大学大学院・神経病態内科学)

疾患を疑うポイント

●典型的には,中年期に発症し,舞踏運動や認知機能低下,精神症状がみられる.

●家族歴を有する.

学びのポイント

●常染色体優性遺伝性疾患で,Huntingtin(HTT)遺伝子のCAGリピート伸長が原因.トリプレットリピート病の1つで,表現促進現象を認める.

●性格変化や軽微な不随意運動で発症し,次第に認知機能障害や舞踏運動,歩行障害を認め,進行すると無言無動,臥床状態となり,栄養失調や誤嚥・窒息により,15~20年で死亡する.

●抑うつ症状や自殺の頻度が高い.

▼定義

 進行性の運動障害と認知機能低下,精神症状を呈する常染色体優性遺伝性の神経変性疾患で,HTT遺伝子のCAGリピート伸長を認める.

▼病態

 原因遺伝子は,第4番染色体短腕4p16.3に存在するHTTで,Huntington(ハンチントン)病ではこの遺伝子のCAGリピートが36回以上に伸長している.36~39リピートでは不完全に浸透し,40リピート以上で完全に浸透する.世代が進むごとにリピートが増加し,発症年齢が若くなる表現促進現象を認める.

 病理学的には,尾状核と被殻の高度な神経細胞脱落と萎縮を認め,変異huntingtinの凝集体からなる核内および細胞質内封入体は本疾患の特徴である.

▼疫学

 欧米に比べてアジア,アフリカでは,発症率が低い.白人の発症率は,10万人あたり4~10人に対し,わが国では0.7人とされる.

▼診断

臨床症状

 初期には,手指やつま先の軽微な不随意運動で始まり,次第に,四肢近位および体幹にまで及び,舞踏運動が明らかとなる.歩行は酩酊様で転倒しやすい.遂行機能障害も認め,思考緩慢,注意力障害など,いわゆる皮質下性認知症が主体となる.精神症状は発症初期からみられることが多く,しばしば運動症状に先行する.抑うつ症状は典型的で,自殺率も高く,発症初期や身体的依存度が高まる時期に多い.アパシー,不

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?