血中フェニルアラニン(Phe)濃度が2mg/dL(120μmol/L)異常を高Phe血症という.Phe水酸化酵素(phenylalanine hydroxylase:PAH)自体の異常による場合と,補酵素テトラヒドロビオプテリン(tetrahydrobiopterin:BH4)の産生障害に大きく区別される.したがって高Phe血症ではBH4負荷試験で鑑別をすることが必須である.
➊Phe水酸化酵素(PAH)異常症
新生児マス・スクリーニングの普及で無治療例はほぼなくなっている.無治療例では精神発達遅滞,赤毛,色白をきたす.古典型フェニルケトン尿症(phenylketonuria:PKU)〔第6章「フェニルケトン尿症」の項(→)を参照〕,BH4反応型高Phe血症,血中Phe濃度が2~4mg/dL程度で治療を必要としない軽症高フェニルアラニン血症に分類される.Phe除去ミルクと普通ミルクもしくは食事との併用で血中Pheを全年齢2~6mg/dLにコントロールすることが,成人期の健全な生活に重要と考えられるようになっている.母性PKU防止のため成人女性においても,妊娠期間を通して血中Pheを2~6mg/dLに制限することが必要である.BH4反応型では,BH4の大量投与で,食事制限をしなくても治療域にPhe濃度をコントロールできる症例が多い.
➋BH4欠損症
BH4はPAHのほかチロシン水酸化酵素,トリプトファン水酸化酵素の補酵素であり,この3反応が障害される.乳児期にけいれん,筋緊張亢進,知能障害を呈する.BH4産生系のGTPシクロヒドロラーゼⅠ,6-ピルボイルテトラヒドロプテリン合成酵素,セピアプテリン還元酵素(sepiapterin reductase:SR),再生系のジヒドロプテリジン還元酵素(dihydropteridine reductase:DHPR),プテリン-4α-カル
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