診療支援
治療

3 ウェルニッケ脳症
Wernicke encephalopathy
和泉 唯信
(徳島大学大学院教授・臨床神経科学)

疾患を疑うポイント

●大量飲酒,胃切除後,低栄養状態などに続発する.

●意識障害,外眼筋麻痺,小脳失調が三徴.

学びのポイント

●ビタミンB1(チアミン)欠乏により意識障害,外眼筋麻痺,小脳失調の三徴を呈する.

●臨床症状,MRI所見,血中ビタミンB1低下によって診断する.

●ビタミンB1の補充により症状はすみやかに改善するが,後遺症を残すこともある.必ずブドウ糖投与前にビタミンB1を投与する.

▼定義

 ビタミンB1(チアミン)欠乏により意識障害外眼筋麻痺小脳失調の三徴を呈する疾患.

▼病態

 ビタミンB1は細胞膜の浸透圧勾配の維持やミトコンドリアでの糖代謝における補酵素として働き,関連する糖代謝に強く依存する部位としては中脳水道周囲,第四脳室底,視床内側,乳頭体,小脳虫部がある.ビタミンB1の不足によりこれらの部位に浸透圧勾配の破綻やエネルギー産生障害,酸化ストレスによる細胞障害をきたし,臨床症状として意識障害,外眼筋麻痺,小脳失調をきたす.

▼疫学

 その病態から成人発症が多いが,最近は摂食障害児,ネグレクト,過量なスポーツドリンク摂取などによる小児例が増加している.

▼分類

 ビタミンB1欠乏をきたす病態はアルコール性非アルコール性に分類される.アルコール性では,Marchiafava-Bignami(マルキアファーヴァ-ビニャミ)病を合併することがある.非アルコール性では,妊娠悪阻,肥満症治療手術後,胃または十二指腸切除術後,血液透析,長期経管栄養をはじめとして,その原因は多岐にわたる.

▼診断

 臨床症状,頭部MRI所見で疑い,血中ビタミンB1の低下を確認して診断する.

臨床症状

 意識障害,外眼筋麻痺,小脳失調の三徴を呈するが,意識障害のみのことも少なくない.失見当識,健忘,作話,病識欠如を四徴とするKorsakoff(コルサコフ)症候群をしばしば合併しWernicke-Korsak

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?