疾患を疑うポイント
●乳児型,小児型,若年型,成人型としていずれの年齢でも発症する.
●進行性の行動異常,運動障害,錐体路症状,けいれん,成人期では歩行障害,知能障害,性格異常,精神症状で発症.
学びのポイント
●副腎白質ジストロフィーはX連鎖遺伝病であり典型例では5~6歳での性格変化,行動異常,急激な歩行障害,言語障害,副腎機能障害などあり.
●異染性白質ジストロフィーは1~2歳頃歩行障害,筋力低下で発症,Krabbe病は通常乳児期の5~6か月で発達障害,痙性麻痺,けいれんで発症,いずれの疾患も急速な脱髄症状が頭部MRIでみられる.
▼定義
副腎白質ジストロフィーは血清極長鎖脂肪酸の増加により,また異染性白質ジストロフィーではライソゾーム酵素のアリルスルファターゼA,またKrabbe病(グロボイド細胞白質ジストロフィー)はガラクトシルセラミダーゼの酵素欠損によりいずれも著明な脳白質変性をきたす.
▼病態
副腎白質ジストロフィーではABCD1遺伝子異常により患者臓器,特に脳白質に極長鎖脂肪酸が蓄積し著明な脱髄をきたす.またAddison(アジソン)病を合併するタイプや成人期に発症する副腎脊髄ニューロパチーなども知られている.異染性白質ジストロフィーはアリルスルファターゼAの欠損により脳白質,胆囊,腎臓にスルファチドが蓄積する.Krabbe病はガラクトシルセラミダーゼ欠損症であり,ガラクトセレブロシドが脳白質にグロボイド細胞として蓄積し,脳白質の脱髄をきたす.いずれもスフィンゴ脂質代謝異常症であり,酵素異常部位は本章「脂質代謝異常症」の項の図10-74図を参照.
▼疫学
わが国の副腎白質ジストロフィーの頻度は約2万人に1人,異染性白質ジストロフィー,Krabbe病の頻度は4万~15万人に1人と推定される.
▼分類と特徴的主要症状
➊副腎白質ジストロフィーの分類
1)小児大脳型
発症3~10歳,性格