診療支援
治療

4 薬物による神経障害と医原性疾患
川井 元晴
(山口大学大学院准教授・臨床神経学)

疾患を疑うポイント

●治療中に出現あるいは増悪した神経症状に対して,薬剤が原因ではないかと疑うことが重要.

●投与中止が原疾患の治療に影響する場合も少なくないため断定には慎重さも必要.

●禁止薬物の場合は本人から正確な情報が得られないことがしばしば.

学びのポイント

●中枢神経系と末梢神経系の一方またはその両者に障害を及ぼす.

●個人差が大きいため投与量が適正であっても生じる可能性がある.

●早期の投与中止が最大の治療法.

●Reye症候群については,インフルエンザや水痘などのウイルス感染症を発症した15歳未満の小児にはアスピリンを含むサリチル酸系消炎鎮痛薬やジクロフェナクは投与禁忌.

▼定義

 薬剤投与後に出現した神経障害.

▼病態

 薬剤の薬理作用による機序アレルギーによる機序がある.前者は用量依存性だが後者は用量に依存しない.

 薬剤の使用開始数週~数か月後に神経症状が生じ,発症早期に薬剤の投与中止または減量により軽快するが,回復しないものもある.

‍ Reye(ライ)症候群は18歳未満の発症がほとんどで,水痘やインフルエンザなどのウイルス感染症の際に,アスピリンやサリチル酸系消炎鎮痛薬を投与することで発症する.急性脳症(嘔吐,意識障害,けいれん,高熱)を呈し,肝臓の脂肪変性とCTで脳浮腫がみられることが特徴.Reye様症候群は,一般的に2歳以下で代謝異常を基礎にもつ例が多くReye症候群類似の症状を呈する.

 麻薬や覚醒剤中毒はドパミン,セロトニン,グルタミン酸に関連した中枢神経系に作用し精神症状を生じる.

▼疫学

 急性期病院では神経系を含めた薬剤性有害事象が入院患者の約10%にみられるが,神経障害の発症頻度についての統計はない.

 Reye症候群は,米国では1980年代が発症のピークで10万人に1人であったが,アスピリンとの関連性が指摘されて以降減少し,最近は年間数例である.本邦では1994~2

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