学びのポイント
●本症は遺伝性末梢神経疾患のなかで最も頻度が高いが,遺伝子解析手法の進歩によりさまざまなgenotype,phenotypeが発見されており,ほかのmotor-sensoryニューロパチーを呈する疾患としっかりと鑑別する必要がある.
▼定義
CMTは遺伝性末梢神経障害をきたし,下肢の萎縮や変形を主症状とするタイプが多い.
▼病態
四肢遠位部の筋力低下,筋萎縮,感覚障害をきたす.筋萎縮による足底の凹足,逆さシャンパンボトル様変形などが特徴となる.病初期は足の骨間筋,虫様筋などの最遠位の筋が障害されるのみで感覚障害も足先の疼痛や冷感にとどまる場合が多い.CMT全体に共通する一般的な合併症としては,腰痛,便秘,足関節拘縮などが多くみられる.遺伝子異常のタイプによって,声帯麻痺,自律神経障害(排尿障害,空咳,瞳孔異常),視力障害,錐体路障害,糖尿病,脂質代謝異常症などの合併がみられるケースがある.重症例では,呼吸不全をきたし,人工呼吸器を必要とする場合もある.
▼疫学
現在までに40種類以上の遺伝子変異が明らかにされているがCMT1型のものが最も多く,PMP22遺伝子異常頻度が多くその検索が重要である.平均発症年齢は20歳前後であるが,60歳以降の発症も数%みられる.有病率は10万人に8~10人前後と報告されているが年々患者数は増加している.
▼分類
わが国では脱髄型がほとんどであり,軸索型はきわめて少ない.
▼診断
ニューロパチーを疑わせる遠位の腱反射の低下,筋萎縮,motor-sensory型のニューロパチー,および家族歴から本疾患を疑い,神経伝導速度で潜時の延長,伝導速度の遅延を証明する.PMP22遺伝子変異を中心に遺伝子変異を検索する.
▼治療
根治療法はないため,対症療法が行われる.下垂足になりやすく転倒し骨折の危険性があるため,足関節の短下肢装具やサポーターを用いる.
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/(2)parkinsonism-dementia complex
- 新臨床内科学 第10版/4 大脳皮質基底核変性症
- 新臨床内科学 第10版/アテトーシス
- 新臨床内科学 第10版/【3】痙性対麻痺
- 新臨床内科学 第10版/(1)遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー
- 新臨床内科学 第10版/先天性ミオパチー
- 新臨床内科学 第10版/(2)遠位型遺伝性運動性ニューロパチー
- 今日の整形外科治療指針 第8版/頚椎の解剖
- 今日の整形外科治療指針 第8版/環椎後頭骨癒合
- 今日の整形外科治療指針 第8版/頚椎症性筋萎縮症
- 今日の整形外科治療指針 第8版/前足根管症候群
- 今日の診断指針 第8版/痙性対麻痺