診療支援
治療

3 多発ニューロパチー(多発神経炎)
polyneuropathy
海田 賢一
(防衛医科大学校准教授・神経・抗加齢血管内科)

疾患を疑うポイント

●しびれ,筋力低下が足から始まることが多い.

●症状は左右対称で手袋靴下型(遠位優位)である.

学びのポイント

●多発ニューロパチーは対称性に四肢末梢優位に感覚・運動障害をきたす末梢神経疾患である.

●代謝・内分泌異常,悪性腫瘍,薬剤性障害,中毒性障害,膠原病などの全身疾患における1つの症候として発症することが多い.

▼定義

 多発ニューロパチーは,末梢神経障害をきたす疾患群のなかで,対称性に四肢末梢(遠位)優位に感覚あるいは運動障害をきたすものを指す.

▼病態

 多発ニューロパチーの病態は背景疾患によるが,障害される神経構造の違いにより,髄鞘障害優位(脱髄),軸索障害優位,後根神経節細胞障害に分けられる.Guillain-Barré(ギラン-バレー)症候群(GBS),慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)ではRanvier(ランヴィエ)絞輪,傍絞輪部が選択的に障害されることがあり,nodopathy,paranodopathyとよばれる.免疫性ニューロパチーには,自己抗体が中心的役割を担う液性免疫が優位な場合と,活性化された細胞傷害性T細胞やマクロファージが神経障害をきたす細胞性免疫が優位な場合がある.悪性腫瘍による遠隔効果(傍腫瘍性症候群)として生じる場合,神経細胞抗原に対する自己抗体が陽性となることがあり,診断的価値がある.遺伝性ニューロパチーでは髄鞘あるいは軸索の形成障害,変性が一様に慢性に進行する.自律神経のみ障害されるニューロパチーでは後根神経節ニコチン性アセチルコリン受容体が標的抗原となる場合がある.

▼疫学

 神経内科に受診する中年以上の患者の3~4%が多発ニューロパチーであるとされる.多発ニューロパチーのなかでは糖尿病性ニューロパチーが最も多

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