学びのポイント
●泥酔後に腕を枕に寝入った際に生じる橈骨神経麻痺はSaturday night palsyとよばれ,急性発症の圧迫性ニューロパチーの代表例である.
▼定義
末梢神経が慢性的にさまざまな原因で圧迫あるいは絞扼されることで生じる単ニューロパチー,あるいは多発性単ニューロパチーの総称である.その症状は緩徐に潜在的に進行していくが,急性発症で圧迫から解放されることで改善するものもある.
▼病態
圧迫あるいは絞扼される好発部位があり,それぞれに症候群名がついている.軽い圧迫で持続する麻痺が誘発される遺伝性圧脆弱性ニューロパチーもある.
▼疫学
明確な統計は不明である.
▼分類
➊手根管症候群(carpal tunnel syndrome:CTS)
女性で,利き手に多い.正中神経領域(母指~環指橈側の掌側)のしびれ・知覚障害・痛みを認め,前腕や上腕まで痛みを訴えることもある.母指球筋の萎縮に伴うつまみ動作の障害がある.手関節掌側で正中神経を叩打すると指先に痛みが放散するTinel(ティネル)徴候,手関節を最大限掌屈させると正中神経領域のしびれ・痛みが誘発されるPhalen(ファーレン)徴候が陽性となる(感度はそれぞれ71%,85%).手指・手関節の過度の使用による機械的刺激とそれに伴う腱滑膜炎,妊娠・更年期のホルモン変化,糖尿病,甲状腺機能低下,先端巨大症(acromegaly),透析,肥満,など原因はさまざまである.
➋肘部管症候群(cubital tunnel syndrome:CuTS)
CuTSは肘内側の肘部管で生じる尺骨神経の絞扼性ニューロパチーである.中年以降の変形性肘関節症に伴うもの,尺骨神経の習慣的脱臼・亜脱臼に伴うもの,肘部の腫瘍(ガングリオンなど),滑車上肘筋,肘周囲の外傷後などが挙げられるが,絞扼部位の多くは内上顆からOsborne(オズボーン)靱帯周囲である.
関連リンク
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- 新臨床内科学 第10版/2 肘部尺骨神経障害
- 今日の整形外科治療指針 第8版/尺骨神経管症候群
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- 今日の診断指針 第8版/圧迫性ニューロパチー(手根管症候群を含む)
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