診療支援
治療

手根管症候群
carpal tunnel syndrome(CTS)
幸原 伸夫
(神戸市立医療センター中央市民病院・副院長)

疾患を疑うポイント

●手のしびれの原因として最も多い.片手のしびれや痛みを訴え,小指には症状がないときにはCTSの可能性が高い.両側性の場合もある.高度の場合には母指球の筋萎縮も生じる.手をよく使う習慣のある人に生じやすい.

学びのポイント

●正中神経の手根管部での機械的圧迫・絞扼による末梢神経の脱髄・軸索障害によって生じる.診断には神経伝導検査が必須である.超音波検査では圧迫部より近位部での神経腫大がみられる.

▼手根管と正中神経の解剖学

‍ 手根管は橈側,尺側,背面を手根骨群など,掌側面を横手根靱帯で囲まれた管腔状のスペースで,ここに正中神経が9本の屈筋腱とともに走行している.表面からみると手首の起始部から約3~4cmの部分に相当する.正中神経は手根管に入る5~6cm手前の前腕部末端で掌枝を出したのち手根管内に入る(図10-78).したがってこの支配域である手掌中央部から母指球にかけての部分は感覚低下を生じない.手根管は入口部より出口のほうが狭く,末端1/3の部分が最も狭く圧迫を受けやすい.正中神経の終枝である総掌側指神経ⅠⅡⅢは指の起始部で最終的に分枝して母指,示指,中指および環指の橈側の手指掌面の感覚を支配する(図10-79).総掌側指神経の運動枝は第1,第2虫様筋を支配する.各分枝はすでに手根管内である程度分かれているためすべての神経分枝が均一に障害されるのではなく,圧迫のされ方により分枝が単独あるいはいろいろな組み合わせで障害される.したがって1~4指のうちの1~2本のみのしびれであることも多い

▼病態と症状

 手根部での正中神経の圧迫により局所の髄鞘・軸索の障害が起こることによる.これには機械的な髄鞘の圧迫・偏位による障害,軸索の挫滅と神経栄養血管の虚血による軸索内輸送の障害や軸索の破壊がある.軸索が破壊されるとWaller(ワーラー)変性が起こり,支配筋は萎縮し,た

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?