診療支援
治療

2 肘部尺骨神経障害
ulnar neuropathy at elbow(UNE)
幸原 伸夫
(神戸市立医療センター中央市民病院・副院長)

疾患を疑うポイント

●小指や環指,手の尺側にしびれや異常感覚を訴える場合にはUNEをまず疑う(図10-79).感覚低下がある場合に環指の尺側と橈側での差があればC8神経根症ではなく尺骨神経障害である.肘を曲げた姿勢で増悪するようならUNEの可能性が高い.

学びのポイント

●UNEは絞扼性神経障害のなかでCTSについで多い.この部の絞扼で多いものは尺側手根屈筋2頭の間,肘部管,上腕骨内側上顆である(図10-81).UNEが肘部管症候群と誤用されていることも多いが区別する必要がある.

▼病態

 症状としては手の尺骨神経支配域である小指のしびれ,感覚低下が最も多く,運動神経の軸索変性が高度な場合は尺側深指屈筋,小指外転筋,骨間筋,尺側虫様筋などの筋萎縮を生じ,かぎ爪手(claw hand,鷲手)を呈する.なお前腕尺側は前腕内側皮神経領域であり肘部尺骨神経障害(ulnar neuropathy at elbow:UNE)は原因となりえず腕神経叢やC8/Th1の神経根障害を疑う.尺骨神経は肘関節前後での圧迫絞扼を生じやすく,肘部管やガングリオンによる圧迫,変形性肘関節症,外反変形による遅発性麻痺など多くの原因があり,絞扼部位もそれによって少しずつ異なる.

▼診断

 神経伝導検査が有用で運動神経の前腕部の伝導速度に比べ肘関節上下の伝導速度が10m/秒以上遅れていれば可能性は高い.さらに短い分節で区切って伝導遅延を調べるインチング法を行えばより正確に絞扼部位が推定できる.ガングリオンなどの原因診断には超音波検査が有用である.

▼治療

 軽症の場合は安静,すなわちできるだけ肘の曲げ伸ばしを行わないようにして,痛みのある場合は鎮痛薬などで保存的に様子をみる.改善がみられないときは原因に応じて靱帯切除術や尺骨神経前方移行術,内側上顆切除術などを行う.

参考文献

1)栢森良二:肘部尺骨神経障害の電気診断学.臨床神

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