▼定義
一側の三叉神経支配領域に刺されるような短時間の激しい疼痛を発作性に繰り返す疾患で,顔面痛のなかで最も頻度が高い.
▼病態
三叉神経根が,橋に入る近傍(root entry zoneと称する)で血管によって圧迫され脱髄を生じ,その部位を焦点として異所性に活動電位が発生することが機序として考察されている(古典的三叉神経痛).一方,炎症や腫瘍などの圧迫により疼痛をきたす場合は二次性(症候性)三叉神経痛と称し,三叉神経領域の欠落症状を伴うことがある.
▼症候
主として一側の三叉神経の第2枝(上顎枝)あるいは第3枝(下顎枝)領域に生じる.刺されるような数秒から1分以内の鋭い激痛を数日から数週にわたり発作性に繰り返し,無症状の間欠期を経て再発する.咀嚼,会話,口腔内への触刺激,顔面への冷気などが誘発因子となりうる.軽い触刺激で疼痛発作を生ずる誘発域(trigger zone)が存在する場合もある.
▼診断
特徴的な臨床像を基礎に診断する.二次性の三叉神経痛を鑑別するために脳の画像検査は施行すべきであり,MRAによりroot entry zoneでの血管による三叉神経根への圧迫の有無を検討することも古典的三叉神経痛の治療法選択のうえで重要である.
▼治療
古典的三叉神経痛の治療の基本は薬物療法である.抗てんかん薬のカルバマゼピン薬が第一選択薬であるが,高齢者ではめまい・ふらつきや眠気が出やすいので,少量から開始して漸増する.まれながら皮膚粘膜眼症候群,中毒性表皮壊死症,無顆粒球症などの重大な副作用があり,副作用を熟知して使用する必要がある.その他,抗痙縮薬のバクロフェン薬や抗てんかん薬のフェニトイン薬薬薬やラモトリギン薬,三環系抗うつ薬のイミプラミン,神経障害性疼痛治療薬のプレガバリン薬なども使用されることがある.
薬物に対して抵抗性の三叉神経痛に対しては手術療法(微小血管減圧術)を考慮
関連リンク
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