診療支援
治療

4 坐骨神経痛
sciatic neuralgia
吉澤 利弘
(NTT東日本関東病院・脳神経内科部長)

▼定義

‍ 臀部から坐骨神経の走行にそって大腿後面を下腿に向けて下方に放射する疼痛をいう.種々の原因があるが,その85%は椎間板に関係している.

▼病態

 第4,第5腰椎および第1,第2仙椎の神経根は腰仙骨神経叢を形成し,その後,脛骨神経,腓骨神経となり,坐骨神経として単一の神経幹を形成して骨盤から出ていく.坐骨神経痛はその走行に沿ったどの部位の障害でも生じうるが病因としては脊椎ないし脊柱管由来の原因が多数を占め,椎間板ヘルニア,腰椎すべり症,腰部脊柱管狭窄症などによる神経根の圧迫,脊柱管内の腫瘍性病変,神経根における神経鞘腫,くも膜炎など多岐にわたる.脊椎関連以外にも,子宮内膜症,梨状筋症候群,骨盤内腫瘍,帯状疱疹,糖尿病性神経症,腰部神経叢炎,妊娠や出産関連,股関節や骨盤の骨折,大腿二頭筋内の血腫形成,臀筋への筋注に伴う外傷など多数の病因が知られている.

▼症候

 脊椎関連疾患による坐骨神経痛では圧迫される神経根の高位により疼痛の放射部位が異なる.L4神経根圧迫の場合には疼痛は大腿の前外側に,L5では臀部から下腿の背外側に,S1では下腿後面に広がり,いずれも腰背部痛を伴うことがある.咳やValsalva(バルサルバ)手技で疼痛が悪化する場合は椎間板の破裂を疑う.障害された神経根のデルマトーム部位にしびれを認めることもあり参考になる.

 坐骨神経痛が神経根の圧迫によって生じることを示すにはLasègue(ラゼーグ)試験が有用である.患者を仰臥位として一側下肢を伸展位のまま他動的に挙上すると,突出した椎間板により神経根が伸展され,反射的に筋収縮を生じる.疼痛の悪化と下肢挙上に対する抵抗の増強があれば陽性である.

▼診断

 診断は臨床的になされるが,腰椎単純X線検査による椎間腔の狭小化や椎体変形の評価,腰椎MRによる神経根の圧迫の評価が有用である.特に矢状断では椎間板の変性や突出,軸位断では

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