疾患を疑うポイント
●筋強直症と特有の顔貌(斧様・ミオパチー様,前頭部禿頭).
▼定義
筋強直症(ミオトニア)を特徴とする常染色体優性のリピート伸長病で筋力低下・筋萎縮に加えて多臓器障害による多彩な症候を呈する.
▼病態
第19染色体長腕のDMPK遺伝子の3'非翻訳領域にあるCTGリピート(DM1)あるいは第3染色体のZNF9遺伝子のイントロン1にあるCCTGリピート(DM2)の異常伸長が原因.リピートが異常伸長したtoxic RNAがスプライシング制御因子をトラップする結果,さまざまな遺伝子発現においてスプライシング異常が惹起されるため多彩な症状が出現する.
リピート数と重症度が相関し,世代を経るごとにリピート数が伸長し,重症化する表現促進現象がみられる.
▼疫学
有病率は10万人あたり約5人で,成人発症の筋ジストロフィーでは最も多く,大部分はDM1である.
▼診断
➊臨床症状
ミオトニア現象は強く手を握ったあと,素早く開拳できない(把握ミオトニア),母指球をハンマーで叩打したときに母指球の収縮が持続する(叩打ミオトニア).近位筋よりも遠位筋が侵されやすい特徴がある.また,顔面筋罹患のためミオパチー顔貌(目を固く閉じられず,口も半開き,眼瞼も下垂)を呈する.前頭部禿頭に加えて,側頭筋・咬筋が萎縮するため特異な斧様顔貌を呈する.筋症状以外では,白内障,知能低下,過眠,心伝導障害,肺換気障害,性腺萎縮,耐糖能障害,消化管の平滑筋障害など多臓器障害の多彩な症候を呈する.
先天性筋強直性ジストロフィーは母親からの遺伝でCTGリピートが著明に伸長(1,000回以上)しており,生後早期からフロッピーインファントを呈し,呼吸障害や哺乳力低下がみられる.筋分化の顕著な遅延を認める.
➋針筋電図
刺入時に出現するミオトニア放電は診断的価値が高い.
➌遺伝子検査
遺伝子検査で確定診断する.
▼治療
現在な
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