診療支援
治療

19 悪性高熱(病態)
malignant hyperpyrexia(MH)
中村 公俊
(熊本大学大学院教授・小児科学)

疾患を疑うポイント

●吸入麻酔や脱分極性筋弛緩薬を使用している際に,説明のできないEtCO2の高値,原因不明の頻脈,15分間に0.5℃以上の体温上昇,38.8℃以上の高体温,開口障害,筋強直,コーラ色の尿,代謝性アシドーシス,PaCO2<EtCO2を認めた場合に本症を疑う.

▼定義

 全身麻酔の薬剤に曝露されることによって発症する急激な体温上昇.

▼病態

 悪性高熱の素因をもつ患者では,骨格筋細胞内の筋小胞体から細胞質へのCa放出が亢進している.この素因をもつ患者に揮発性吸入麻酔薬や,脱分極性筋弛緩薬を投与すると,さらにCa放出が亢進し,細胞内Ca濃度の急激な上昇により筋収縮が異常に持続する.そのため,ATP消費も亢進し,異常な発熱が起こる.そして,全身の骨格筋の持続的収縮による温度上昇のために体温は急激に上昇する.組織は低酸素状態となり,代謝性アシドーシスや筋肉の崩壊を生じて細胞内物質が血液中に流

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