疾患を疑うポイント
●吸入麻酔や脱分極性筋弛緩薬を使用している際に,説明のできないEtCO2の高値,原因不明の頻脈,15分間に0.5℃以上の体温上昇,38.8℃以上の高体温,開口障害,筋強直,コーラ色の尿,代謝性アシドーシス,PaCO2<EtCO2を認めた場合に本症を疑う.
▼定義
全身麻酔の薬剤に曝露されることによって発症する急激な体温上昇.
▼病態
悪性高熱の素因をもつ患者では,骨格筋細胞内の筋小胞体から細胞質へのCa放出が亢進している.この素因をもつ患者に揮発性吸入麻酔薬や,脱分極性筋弛緩薬を投与すると,さらにCa放出が亢進し,細胞内Ca濃度の急激な上昇により筋収縮が異常に持続する.そのため,ATP消費も亢進し,異常な発熱が起こる.そして,全身の骨格筋の持続的収縮による温度上昇のために体温は急激に上昇する.組織は低酸素状態となり,代謝性アシドーシスや筋肉の崩壊を生じて細胞内物質が血液中に流入する.血中のカリウム,乳酸,ミオグロビン,CKなどが高値となる.骨格筋崩壊により腎障害もきたす.
▼疫学
全身麻酔を受けた症例の10万人に1~2人の頻度で発症する.
▼診断・治療
吸入麻酔や脱分極性筋弛緩薬を使用している際に,説明のできないEtCO2の高値,原因不明の頻脈,15分間に0.5℃以上の体温上昇,38.8℃以上の高体温,開口障害,筋強直,コーラ色の尿,代謝性アシドーシス,PaCO2<EtCO2を認めた場合には,悪性高熱を疑い必要な治療を開始する.
治療する際には,吸入麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬を中止し,静脈麻酔に変更する.ダントロレン2.0mg/kgを15分程度で投与することがガイドラインで推奨されている.過換気に反応してEtCO2が低下し,筋強直が改善し,心拍数が低下するまで,適宜繰り返し投与する.さらに,体温を下げるため,冷却した生理食塩液薬を点滴静注(最大用量50~60mL/k