疾患を疑うポイント
●大脳皮質の電気的な過剰興奮で出現するてんかん発作は,いわば正常の大脳皮質機能と表裏一体で,皮質機能が動的に変容して出現する.
●部分てんかんでは,意識減損を伴わない単純部分発作や意識減損を伴う複雑部分発作が出現.
●側頭葉,前頭葉由来の発作の特徴を押さえながら,常同性のある発作症状を病歴から聴取することが診断に重要.
学びのポイント
●てんかん発作では繰り返し同じ発作型が出現(常同性).
●てんかん焦点から電気的過剰興奮が出現して部分発作は生じるが,意識減損の有無で,単純(意識減損なし)ないし複雑(意識減損あり)部分発作と分類する.
▼定義
大脳皮質の一部が過剰興奮する性質(てんかん焦点)を獲得して,大脳皮質の限局した領域から過剰興奮が始まりてんかん発作(部分発作)が生じる病態が部分てんかん(局在関連性てんかん)である.てんかん焦点の位置する脳葉に基づいて,側頭葉てんかん,前頭葉てんかんなどと命名される.
▼病態
てんかん発作は関与する脳領域が元来もっている正常の機能と表裏一体であり,発作時には大脳皮質の刺激症状(陽性症状),脱落症状(陰性症状),ないし変容症状が現れる.単純部分発作のうち,患者本人が自覚・知覚する症状(すなわち他者からは症状は見えない)は前兆(aura)とよばれる.前兆は,発作開始時に電気的過剰興奮が脳の一領域に限局している場合に出現する.
部分てんかんで最も頻度が高いのは,側頭葉てんかんで,ついで前頭葉てんかんが多い.側頭葉てんかんは,てんかん焦点の位置から内側側頭葉てんかんと外側側頭葉てんかんに分けられる.内側側頭葉てんかんの病因としては海馬硬化が最も多い.典型的な前兆として,心窩部から喉への突き上げ感が多く,辺縁系の過剰放電による既視感,未視感や恐怖感なども出現しうる.その後,意識減損(複雑部分発作に移行)し,運動停止,凝視や口・手の自動症(一
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