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2 神経線維腫症1型(フォン・レックリングハウゼン病)
neurofibromatosis 1(NF1),von Recklinghausen disease
金田 眞理
(大阪大学大学院准教授・皮膚科)

▼定義・病態

 von Recklinghausen(フォン・レックリングハウゼン)病は,原因遺伝子NF1遺伝子の異常の結果,それがつくる蛋白,ニューロフィブロミン(neurofibromin)が異常をきたし,下流のRas-MAPKおよびPI3K-Akt-mTORの系が恒常的に活性化することにより細胞増殖,細胞死の抑制が起こり全身に神経線維腫をつくる(図10-105)NF1遺伝子は腫瘍抑制遺伝子であり,病変部ではLOH(loss of heterozygosity)が起こっているが,通常Schwann(シュワン)細胞のNF1のLOHだけでは腫瘍が生じず,肥満細胞(mast cell)や線維芽細胞(fibroblast)など腫瘍周辺の微小環境が重要である.

 臨床的には皮膚症状としてカフェオレ斑,神経線維腫(図10-106)をはじめとして,小Recklinghausen斑,時に巨大色素斑を認め,貧血母斑や若年性黄色肉芽腫,グロムス腫瘍の合併も多い.神経線維腫は皮膚の神経線維腫,神経の神経線維腫,びまん性神経線維腫があり,悪性化で悪性末梢神経鞘腫を生じる.骨病変としては先天性脛骨偽関節症,思春期頃には脊椎の変形に注意が必要である.3%程度に脳腫瘍の合併がみられ,30%近くに,学習障害,注意欠如多動症を認める.MRIでunidentified bright object(UBO)を認める.小児期にはカフェオレ斑しか認めないことも多い.虹彩結節を高頻度に認め診断的意義は大きい.褐色細胞腫や消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)の合併も多い.

▼診断

 診断基準は「神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)診療ガイドライン2018」を参照.

▼治療

 さまざまな分子標的薬による臨床試験が進行中であるが,根治的治療はない.色素斑に対してはよ

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