診療支援
治療

4 フォン・ヒッペル-リンドウ病/症候群
von Hippel-Lindau(VHL) disease/syndrome
伊藤 康
(東京女子医科大学派遣准教授・小児科)

▼定義

 複数の臓器に囊胞や腫瘍性病変が発症する常染色体優性の遺伝性腫瘍性疾患.小脳・脳幹・脊髄などの中枢神経系(central nervous system:CNS)に出現する血管芽腫や網膜血管腫は良性の血管新生腫瘍である.腎囊胞の発生頻度が高く,肝臓,膵臓,生殖器にも囊胞性病変は多発する.腎細胞癌(renal cell carcinoma:RCC),副腎褐色細胞腫,膵神経内分泌腫瘍,内耳リンパ囊腫なども認める.

▼病態

‍ VHL遺伝子(3p25)の変異により発症する.細胞の低酸素状態に反応して活性化する低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor:HIF)は,低酸素下では血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)などの転写を促進し血管新生を誘導する.VHL蛋白はHIFの分解を促し,正常細胞ではHIF量が調整されている.VHL蛋白の異常または欠損により,HIFや,エリスロポエチン・VEGFなどの下流成長因子が無抑制に過剰発現し,VHL病に特徴的な囊胞や血管新生腫瘍が生じる.

▼疫学

 米国では3万~5万人に1人の発生とされ,国内では約200家系,患者数1,000人弱と推定される.家族性が8~9割である.男女差はない.

▼分類

 合併腫瘍の有無で表10-62のように分類される.

▼診断

 VHL病診療ガイドライン2017年版の診断基準では,家族歴の有無で異なり,家族歴がある場合はVHL関連病変(網膜血管腫,CNS血管芽腫,内耳リンパ囊腫,RCC,褐色細胞腫,膵囊胞・膵臓の神経内分泌腫瘍,精巣上体囊胞腺腫)が1つでも認められればVHL病と診断できる.家族歴がない場合でも,多発性の血管芽腫,あるいは血管芽腫とその他のVHL関連病変があれば診断できる.血管芽腫以外のVHL関連病変の発症では,VHL遺伝子異常が確認さ

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