診療支援
治療

6 色素性乾皮症
xeroderma pigmentosum(XP)
伊藤 康
(東京女子医科大学派遣准教授・小児科)

▼定義

 日光露光部に皮膚癌を高頻度に発症する常染色体劣性の遺伝性光線過敏症.紫外線(UV)の曝露を受ける皮膚や前眼部眼症状だけでなく,わが国では半数以上に原因不明,進行性,難治性の中枢性および末梢性神経変性症状を併発する.A~G群,バリアント(V)型の8つのサブグループに分けられ,それぞれの原因遺伝子が判明しており,臨床的特徴は異なる.

▼病態

 UVによるDNA損傷は,皮膚癌発症の予防に重要なヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair:NER)経路によってほぼ除去される.XP患者では,NERカスケードの構成因子に遺伝子異常があるためDNA損傷による細胞死や突然変異を抑制できず,若年齢での皮膚の早期老化,癌化,そして神経変性が引き起こされる.Cockayne(コケイン)症候群やWerner(ウェルナー)症候群などとともに遺伝性のDNA損傷修復障害の群に属する.

▼疫学

 2.2万人に1人の発生と推定され,欧米の100万人に1人と比べるとまれではない.わが国では神経症状を伴う重篤なA群が過半数を占め,約1/4が皮膚症状のみのV型である.

▼分類・診断(図10-109)

 臨床的には皮膚症状のみの皮膚型,皮膚症状に神経症状を伴う神経型,皮膚症状にCockayne症候群を合併するCockayne症候群合併型(XP/CS)に分類される.2015年に診療ガイドラインが改訂され,新診断基準が作成された.

 A群では,生後早期から高度の日焼けがあり,成長に伴い露光部皮膚の乾燥,雀卵斑様色素斑,萎縮が目立ち,小児期に皮膚癌を発症する.6歳頃に運動・言語機能の発達のピークを迎え,以降は退行し15歳頃には起立も発語も困難になる.聴力や嚥下機能の退行も早期に現れる.

▼治療・予後

 根本治療はなく,早期診断が重要である.予後および疾患経過を改善するためにも,UVの完全防御や,皮膚

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