診療支援
治療

1 熱性けいれん
febrile convulsion
廣瀬 源二郎
(浅ノ川総合病院・脳神経センターてんかんセンター・センター長)

疾患を疑うポイント

●健康な6か月乳児から5歳までの小児が風邪症状などとともに38℃以上の発熱時に起こした全身けいれん発作.

▼定義

 特に発育異常のない健康な6か月から5歳までの乳幼児で頭蓋内感染症,代謝異常はない状態で38℃以上の発熱時にみられる全身けいれん発作.

▼病態

 完全にはわかっていないが,10~20%で家族性にみられることから遺伝的要因が考慮され,かかる年齢での不十分な髄鞘化による脳発達未熟性が高熱時に増加した神経細胞熱代謝に対応できず温度調節が十分にできないために異常放電が起こるとされる.

▼疫学

 有病率は諸外国,特に米国,西欧では5歳未満の小児で2~5%にみられるが,わが国の報告では7~11%と高く,人種や民族差の関与も考えられる.ただ信頼性の高い岡山県玉野市の全数調査では5歳未満小児で3.4%にみられたとの報告もあり,諸外国との差はない.

▼分類

 ①全身けいれん発作の持続が15分以下で24時間に1回しか起こらない単純型熱性けいれん(約70~80%)と,②全身けいれん発作が15分以上持続し,時に焦点性運動発作,眼球偏倚もきたし1日に1回以上起こる複雑型熱性けいれん(約20~30%)の2つに分類される.

▼診断

 病歴聴取で感染症,頭部外傷,薬物投与,中毒物質の曝露などの有無と同様の既往発作の有無を確認し,ついで発作の起始から推移,終了までの持続時間,患児の動き,状態を確認する.

 身体所見を含む神経学的検査で意識レベルの診断,髄膜刺激症状〔項部硬直,Kernig(ケルニッヒ)徴候,Brudzinski(ブルジンスキー)徴候〕の有無を確認し,筋緊張,筋力などから片麻痺などの局在徴候を診る.これらの病歴聴取と神経診察で異常のないことを確認することで診断できる.髄膜刺激症状が疑われる1歳半未満患児では腰椎穿刺で髄膜炎のないことを確認すべきである.

▼治療

 単純型熱性けいれんでは特に

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