診療支援
治療

2 憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)
breath-holding spells
廣瀬 源二郎
(浅ノ川総合病院・脳神経センターてんかんセンター・センター長)

疾患を疑うポイント

●患児が大泣きしているときに,息を吐いた呼気のまま呼吸停止して顔色が変わり意識消失し,全身がぐったりしけいれんを起こす.

▼定義

 6か月の乳児から2~3歳児でみられる大泣きで数回呼吸したところで呼気停止とともに顔色が蒼白かチアノーゼとなり身体がぐったりしたところで四肢を強張らせたり数回手足をけいれんさせたりする非てんかん性良性無呼吸性失神発作

▼病態

 わずかの侵害刺激や怒りで起こる反射性血管迷走神経失神で徐脈・心停止があり,脳虚血をきたし顔面蒼白となる患児が約20%,大泣きで低炭酸ガス血症となり無呼吸から低酸素血症,力むことでValsalva(バルサルバ)試験同様の胸腔内圧亢進,心拍出量減少から起こる脳虚血でチアノーゼとなる患児が62%で,ほかにこの両者の混合する患児が約2割ある.自律神経系の調節異常の関与が推定される.

▼疫学

 生後6か月から3歳までの小児の4~5%にみられる疾患で,その95%は2歳までにみられ,2歳以降の発症は5%にすぎない.年齢的発達により自然消失する良性疾患である.

▼分類

 二群に大別され,①大泣きで数回呼吸をしたところで呼気停止をするとともに顔面チアノーゼを呈してぐったりしたのち四肢を強張らせ,時にけいれんするチアノーゼ型泣き入り発作(cyanosis form),②わずかの侵害刺激や怒り・不満から泣き,反射性に起こる血管迷走神経性失神で顔面蒼白となり脳虚血から起こる蒼白型泣き入り発作(pallid form)の2型がある.

▼診断

 病歴からチアノーゼ型か蒼白型かはほぼ診断でき,脳波心電図同時記録中に侵害刺激あるいは眼球圧迫試験〔Aschner(アシュネル)試験〕を負荷することで徐脈・心停止が誘発できれば後者が診断できる.同様の刺激で有意の徐脈や心停止なしに泣き入ることで無呼吸・チアノーゼを呈し脳波の高振幅δ徐波群発で発作が誘発できれば前

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