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治療

6 中心・側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん
childhood benign focal epilepsy with centro-temporal spikes
赤松 直樹
(国際医療福祉大学教授・脳神経内科学)

疾患を疑うポイント

●学童期に発症し,睡眠中の片側顔面のけいれん発作,流涎を特徴とする.全身けいれん発作に進展することもある.

学びのポイント

●年齢依存性てんかんの代表的疾患の1つ.Rolando溝周囲(centro-temporal area)のてんかん原性が学童期のみに亢進している病態.

▼定義

 通常基礎疾患はなく,患児の発達は正常である.てんかん発症年齢は3~14歳であり,多くは5~8歳に発症する.睡眠中の片側顔面間代発作をはじめとする焦点発作〔Sylvius(シルヴィウス)発作〕をきたし,脳波で睡眠により賦活化される中心・側頭部棘波(Rolando spike)を認めるてんかん症候群である.

▼病態

 年齢依存的にSylvius溝周囲のてんかん原性が高まった状態である.脳の発達過程に関連したてんかんで遺伝的要因も関与する.ほぼ全例で自然治癒がみられ,良性てんかんといわれる所以である.一方,てんかん性放電が脳機能を障害する可能性も完全には否定できないという意見がある.

▼疫学

 小児てんかんで最も多いてんかんとされている.やや男児に多い.

▼診断

 最も特徴的な発作は,睡眠中の半側顔面間代発作である.顔面・口部の異常感覚発作,流涎,構音障害を伴うこともある.半身けいれん,両側強直間代発作への進展がみられることもまれではない.発作間欠期の脳波は,覚醒時には正常背景活動がみられ,睡眠で賦活化される中心側頭部棘波を認める(図10-112).中心側頭部棘波は,高振幅で出現頻度が高いことが特徴であり,多くの例で両側にみられる.診断は,明らかな基礎疾患がない正常発達児,特徴的なてんかん発作,睡眠で賦活される中心・側頭部棘波の存在,の3点から行う.

▼治療・予後

 抗てんかん薬は焦点発作に効果のある,カルバマゼピン,レベチラセタム,ラモトリギンなどを用いる.発作頻度は,経過中に1~2回のみから

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