●末梢神経疾患の診断に最も有用な検査は神経伝導検査で,運動神経と感覚神経について,軸索障害か脱髄性障害かの病態の評価が可能になる.筋力低下や脱力をきたす場合は,筋疾患や運動ニューロン疾患,神経根・脊髄障害との鑑別に,針筋電図検査を行う.
◆神経伝導検査
●神経伝導検査は,末梢神経を電気刺激して被検神経が支配する筋活動や感覚神経活動を分析する検査である.記録される電位は,運動神経伝導検査では運動単位電位が集合した複合筋活動電位(compound muscle action potential:CMAP,通称M波),感覚神経伝導検査では単一神経電位が集合した複合感覚神経活動電位(sensory nerve action potential:SNAP)である.
◎神経伝導検査の目的
①末梢神経障害があるかどうか
②病変分布は限局性か広汎性か─単ニューロパチー,多発ニューロパチー,多発単ニューロパチー
③軸索変性か脱髄か
④神経線維脱落の程度
⑤潜在性病変がないか
⑥回復を示唆する所見はあるか
◎異常所見の評価
●M波振幅や面積の低下:伝導可能な運動神経線維数の減少
①軸索変性/神経線維数減少:どの刺激部位でも一様に低振幅となる.
②脱髄性伝導ブロック:筋に近い神経遠位部刺激では大きなM波振幅が得られるが,神経近位部刺激では低振幅になる.後天性脱髄疾患は治療の可能性があるので,非常に重要な所見.
③時間的分散:M波を構成する複数の運動単位電位の伝導速度の不揃いによる.
●SNAP振幅や面積の低下:伝導可能な感覚神経線維数の減少
基本的には「M波振幅や面積の低下」の①~③と同じ機序で生じるが,感覚神経電位は個々の持続時間が短いため,時間的分散だけでも振幅低下が高度で,脱髄病変では容易にSNAPが記録不能になる.
●最大伝導速度低下,潜時延長:伝導遅延の所見
①脱髄:正常下限を30%以上下回